J1で残留争いもカップ戦では準優勝。悲喜こもごもの戦いを余儀なくされた新潟で、松橋力蔵監督が貫いた信念。気になる去就は?
続投? 退任? 現時点では名言せず
今季もタイトルまであと一歩と迫ったのは紛れもない事実。複数トーナメントで常に上位という結果を残す力はまだないのかもしれないが、松橋体制になってからチーム全体がポジティブな方向に進んでいるのは確か。それは選手個々の成長からも感じられる点だ。 特に今季はボランチの秋山裕紀、FWの長倉幹樹、夏に加入した左サイドバックの橋本健人、東洋大在学中の特別指定選手の稲村隼翔らの飛躍が大いに目立った。 「秋山は非常に素晴らしい活躍で成長してくれました。浮き沈みが激しいところもありましたが、可能性の塊。良くも悪くも影響力のある今後が楽しみな選手だと思っています。 長倉も無限の可能性を秘めた選手。サッカーを続けていくうえで、選手は常にハングリーでなければいけないと思いますが、彼からはそれを強く感じます。ルヴァンの決勝ではPKを外しましたけど、彼のパスから最後のゴールが生まれている。長倉がそこまで連れてきてくれたからこそファイナリストになれた。今後の常にハングリーに上を求め続けてほしいですね。 橋本と稲村に関しては、若いだけに可能性に溢れている。それを自分で潰すことだけはしてほしくない。止まるな、動き続けろと。うまくいかなくなると止まってしまう若い選手もいるが、次へ次へと足を踏み出して、走り続けてほしいと思います」と、松橋監督は各選手に対する質問にしっかりと回答。新潟の大黒柱へと飛躍していくことを強く願っている様子だった。 問題はこの指揮官が来季も彼らの指導を継続していくか否か。シーズン中から松橋監督の評価はうなぎ上りだ。もちろん新潟も続投要請をしているようだが、複数クラブから就任オファーが届いている模様。「Jリーグ屈指の名将」と位置づけられる男の動向は、今オフ最大の関心事と言っていいだろう。 本人は「この時点で何かお話しできる状態ではありません」とノーコメントを貫いたが、新潟としては続投・退任のいずれにもかかわらず、松橋体制で築いたものを先につなげていくことが重要になる。 指揮官がこだわった自陣からの丁寧なビルドアップ、機動力ある攻撃、全員が連動したハイプレスといった魅力を失ってしまったら、新潟というチームの成長も止まってしまう。そうならないようにクラブとして継続路線を貫いていくべきだ。 2025年はリーグ戦で23年の10位以上の結果を求めると同時に、カップ戦でもいいからタイトルを掴みたいところ。難しいハードルではあるが、貪欲に高みを追い求めてほしいものである。 取材・文●元川悦子(フリーライター)