「飲むだけで痩せる」は存在しない!SNSで拡がるダイエットサプリの危険性
SNSやネット広告でよく見かける「ダイエットサプリ」や「ダイエット漢方」。“飲むだけで痩せる”、“食べるだけで痩せる”などと謳っているものが多いことで知られていますが、本当にそんな魔法のような医薬品や食品があるのでしょうか? 【写真】栄養士が推薦する「腸内環境」を整える食材と効能 本記事では、「ダイエットサプリ」をはじめとした健康食品や「ダイエット漢方」の実態、医薬品の個人輸入のリスク、実際に報告された副作用や健康被害について、金沢大学で偽造医薬品ならびに不適正流通医薬品の研究に従事する吉田直子助教に伺いました。
監修:吉田直子助教(金沢大学・医薬保険研究域薬学)
富山医科薬科大学薬学部薬科学科を卒業したのち薬剤師免許を取得。2009年より金沢大学にて様々な研究に従事し、現在は偽造医薬品ならびに不適正流通医薬品などの検出法開発に関する研究に尽力している。金沢大学医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター助教。
ネットで見かける「ダイエットサプリ/漢方」の危険性
10年以上前から市場に出回りはじめたと言われる「ダイエットサプリ」などの健康食品。最近は、「ダイエット漢方」と言われるダイエットをしている方たちをターゲットとした医薬品の広告を、SNS上で見ることも多くなりました。 そもそもネット上で宣伝・販売されているもので、本当にダイエット効果が得られるのか疑問に思ったことがある人も多いはず。その効果について、吉田先生は次のように話します。 「種類や成分はそれぞれなので、一概に効果について答えることは難しいですが、効果云々よりも副作用や健康被害などのリスクが高いことを理解してほしいです」 ◆「飲むだけ・食べるだけで痩せる」は存在しない 実際に2022年に、国内でネット経由で販売されていた「Detoxeretゼリー(Detoxeret Jelly)」を購入した人たちから健康被害の報告が続出。調査の結果、Detoxeretゼリーからは未承認の医薬品成分シブトラミン※が検出されました。 (※シブトラミンは、食欲抑制作用が認められたため、一度は医薬品として承認をされたものの、医薬品として使用するには安全性に関するリスクが高く、副作用が重すぎるため、後に承認を取り消されることになった成分。日本では、製造販売承認申請が取り下げられた成分。) 「“飲むだけで痩せる”といったものは存在しないのが現実です。ネット上には“痩せる”と謳っているものが出回っていますが、実際に服用したことで副作用が起きた場合には、健康に支障をきたすだけではなく命を落とす危険性もあります」 ◆欧米では副作用による死亡例も 日本では2022年、医薬品成分シブトラミンを摂取したことによる体調不良を訴えた人が複数人確認されています。またアメリカでは過去、同成分によって死亡した方がいることも報告されました。 厚生労働省の委託を受けて、一般社団法人「偽造医薬品等情報センター」が運営する「あやしいヤクブツ連絡ネット」によると、シブトラミンは高血圧、不整脈、幻覚、気分の落ち込みなどの症状を引き起こす可能性があることがわかっています。 他にも「ホスピタルダイエット(MDダイエット)※」などと称されるダイエットのために薬を購入した人を巡って、過去に多数の健康被害が報告されています。 (※ホスピタルダイエットは、海外の病院を利用してダイエット効果が期待できる薬をインターネット上で処方・発送してもらい、服用するというもの。) ◆ダイエット目的の“不適切”な薬の使用が増加 最近では、血糖値をコントロールするために必要な医薬品として使われている糖尿病の治療薬である「GLP-1受容体作動薬」をダイエット目的で服用している人も見られます。本来、GLP-1受容体作動薬は医師の処方のもとで服用するべきものですが、処方なしで手に入れられるケースがあり問題視されています。 「糖尿病の治療に使われる薬なので、そういう意味ではダイエットをしている方たちが期待する作用があります。ただ、それはあくまでも血糖値をコントロールする必要のある方々が使うものであって、糖尿病でない人が使うものではありません」 吉田先生によると、GLP-1受容体作動薬を含むいくつかの薬は、体重減少に対しても治験が進んでいるそう。しかし、その結果の一部だけを切り取って「これらの薬がダイエットに適しているかどうか」を判断するべきではありません。 GLP-1受容体作動薬をはじめ、肥満症の改善に効果があるとされる防風通聖散などの漢方薬も、流通しているからといって全員にとって安全なものだとは限りません。副作用のリスクなども含めて、薬の効果や服用が推奨される人などをしっかりと理解する必要があることを覚えておきましょう。