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川本三郎「私が選んだベスト5」 夏休みお薦めブックガイド

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Book Bang

 ミステリ小説では多くの場合、事件を追う新聞記者はその他大勢の役割しか与えられていない。  それに対し、新聞記者出身の伊兼源太郎の『事件持ち』は殺人事件を取材する若い記者が主人公で、その内面の苦悩が描かれる。  千葉県で連続殺人事件が起きる。大手新聞の支局で働く入社二年目の記者が事件を担当する。  取材先で新聞記者は嫌われる。被害者の遺族からは「それでも人間か」と拒絶される。非情に徹して取材するか、立ちどまるか。  通常のミステリのように単に犯人逮捕で終らない。  若い記者の職業倫理に関わる葛藤が胸を打つ。  桜木紫乃は出身地である北海道を離れることなく、北の地で生きる市井の人々を堅実に描き続けている。

『家族じまい』は、ある家族をめぐる連作小説。  認知症になった母親。その世話を誰がするのか。姉か妹か。それぞれに家庭があるから難しい。  桜木紫乃の筆致は周縁の人間を描くとき特に冴える。本書で強い印象を残すのは温泉旅館で仲居として働く老女。一人で「元気に死ぬ」ことを考えている。そのための貯えも出来た。  一人で生き一人で死んでゆく。市井には無名であっても強い一個人がいることを思い知らされる。  明治時代、北海道に理想郷を作ろうとした、こういう人間がいたのか。

 元北海道新聞記者、合田一道の『評伝 関寛斎 1830-1912』には蒙を啓かれた。  司馬遼太郎が『街道をゆく』で紹介しているという。知らなかった。  江戸から明治にかけての医師。房総に生まれ、長崎で蘭学を学んだ。徳島藩の藩医にもなり名声を得た。  しかし、「医は仁」の考えから、七十歳を過ぎて北海道開拓を決意。現在の陸別町で理想の共同体を夢見て農場を開いた。  雄大な医師の存在に驚かされる。現在、陸別町では彼を顕彰しているという。愛されていたことが分かる。  近年、東京を地形から読み解く試みが盛んだ。  内田宗治は、鉄道に詳しく、東京の地形にも精通しているこの道の第一人者。

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