韓国大統領の弾劾訴追は3例目 尹氏は徹底抗戦か、自らの功績も強調
韓国の国会は14日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」宣布が違憲だとして、尹氏への弾劾訴追案を賛成多数で可決した。野党や無所属議員の賛成に加え、保守系の与党「国民の力」からも12人が賛成したとみられる。尹氏の大統領としての職務は停止され、当面の間、韓悳洙(ハン・ドクス)首相が権限を代行する。韓首相は可決後、記者団に「国政の安定的な運営に全力を尽くす」と述べた。 【写真まとめ】過去にも逮捕、有罪相次ぐ… 主な韓国大統領 180日以内に憲法裁判所が弾劾訴追の是非を判断する。憲法裁が弾劾を認めれば、尹氏は罷免され、60日以内に大統領選が実施される。 投票の結果は、賛成204、反対85、棄権3、無効8だった。弾劾案の可決には、国会の在籍議員300人のうち3分の2に当たる200人以上の賛成が必要。野党と無所属議員は計192人で可決には8人足りなかった。 尹氏が12日に即時退陣を拒否したことから、世論の批判はさらに拡大。与党は14日の議員総会で弾劾への反対は維持しつつ、採決には出席する方針を決めた。賛成した204人のうち12人は「造反」した与党議員とみられる。また棄権と無効票が計11票に達したことも、反対方針への与党内の反発が反映された形だ。 最大野党「共に民主党」など野党6党は、尹氏が3日夜に宣布した「非常戒厳」を「違憲」だと批判。尹氏の弾劾案は7日、反対の方針を決めた与党の大半の議員が国会での投票に参加せず廃案となったが、野党側は12日に2回目の弾劾案を提出していた。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は可決後、「国民がこの国の主であることを証明した」との談話を発表した。 一方、戒厳令の宣布を巡る検察や警察の捜査は進んでいる。捜査当局は、戒厳令の宣布や国会への戒厳兵の派兵などを内乱や職権乱用の容疑で捜査。当局は尹氏を内乱の首謀者とみて立件を目指している。捜査当局は13日、内乱容疑で警察庁の趙志浩(チョ・ジホ)長官を逮捕するなど、軍、警察幹部に対する捜査を加速している。現職大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外。 尹氏は弾劾案可決後、「私は一時、立ち止まるが、決して諦めない」とのコメントを発表した。自らの功績として「韓米日協力の復元」も強調した。12日の談話でも「弾劾にも捜査にも立ち向かう」と徹底抗戦の姿勢を示している。 韓国大統領に対する弾劾訴追は3例目。2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏に対する弾劾訴追は憲法裁が棄却し、盧氏は罷免を免れた。16年の朴槿恵(パク・クネ)氏への弾劾訴追は憲法裁が妥当と判断。朴氏は罷免された。【ソウル日下部元美】