東京で物件100億買った男、今は大阪に夢中な訳
筆者は不動産投資家として、過去10年にわたり、東京で不動産を買い続け、その持ち高は100億円を超えるに至った。短期でここまで保有が増えたのは、2013年の量的緩和政策以降、アベノミクスからはじまる資産インフレ政策を信じて全面的に乗ってきた結果ともいえる。 しかし、スルガ銀行問題以降、銀行は急激に融資を抑えた。「融資なくして投資なし」ともいえる不動産市場ゆえ、これから投資をはじめたい一般投資家にとっては、不動産市場は冬の時代となった。不動産に興味のある人ならば、よく聞く市場遷移の物語であるはずだ。
しかし、日本全体をすみずみまで見ていけば、このような定説にあてはまらないエリアもある点は見逃せない。不動産は都市ごと商圏を形成していて、地域ごとにルールがことなる点をうまく活用すれば、不動産融資の冬の時代にも買い進めることができるだろう。 答えを先に言えば、いまは東京よりも大阪が面白い。最近の筆者の取り組みと合わせて紹介したい。 ■東京の不動産は今も活況 コロナ禍でも東京の不動産市況は落ち着く気配がなく活況だ。賃料が高い路面店舗や大型店、コロナ前から赤字の店舗などは退去して空室化しているが、世間のイメージほど賃貸市場は悪くない。特に一般住居の賃貸は極めて堅調だ。筆者は500部屋近くの住居を管理しているが、入居率はコロナ前と変わらない。
また、2020年は実需マンションの販売が活況であり、「うちの店は過去最高記録」(大手仲介)という声もある。投資物件も売り物が少なく売主は強気の姿勢を崩さない。 筆者は東京では高値圏での打診売りを始めたところだ。現在の表面利回り5%前後では、長期保有しても採算が取れにくい一線を超えたラインといえ、売り手である筆者が「この値段で買ってどうする予定ですか」と聞いているくらいだが、それでも購入検討者は少なくない。
活況の一方、東京では不動産融資が出にくくなっているのが問題だ。「スルガ問題以降はうちも不動産融資は減らしている。自己資金を多めに入れてもらう必要がある」(複数の金融機関)というのが、東京の一般的な空気感だといえよう。融資審査前に門前払いとなるケースも増えており、そのため、小資金の個人投資家やサラリーマン大家は沈黙している。 実際、不動産売買の参加者は、事業会社(非不動産の中堅企業)、地場の不動産業者、高齢地主の相続など、億単位の資金をすぐに出せるプレイヤーが投資家に代わって主役になった。富裕層限定の旧来の閉鎖的な不動産市場に戻ったともいえるだろう。このような融資環境では、東京の不動産にはなかなか手を出しにくい。