引退は「人事異動」社会人野球のレジェンド トヨタ自動車 佐竹功年(41) 第二の人生「プロ野球じゃないとダメですか?」【5年目Dの取材記(2)】
広島カープの守護神、栗林良吏投手は「プロでやっていたら佐竹さんのすごさを日本中の皆さんに知ってもらえていたのにもったいない」と感じていた。 ■「40歳で150キロ近い球を投げ込むサラリーマン」 私も、実際に佐竹さんの投球練習を見て思った。はっきりいって引退する人の球ではない。40歳にして150キロ近い速球を投げ込んでいた。もっと現役を続けたい、という気持ちはないのだろうか?こんな豪速球、投げたくても投げられない人はたくさんいるのに(もちろん私も)。 佐竹さんはさらっと答えた。 「僕はサラリーマンなので結局は人事異動じゃないかと思う」 返ってきた答えは想像していなかったものだった。昨年末に、チームから引退を言い渡された佐竹さん。それまでは「野球が仕事」。引退後はまた別の仕事を頑張るだけなのだという。 家族に引退の報告をしたとき、妻と3人の娘からは「えっ?そうなの?お疲れ様」とだけ告げられて、10秒ほどで解散したらしい(あくまで佐竹さんの記憶では)。それもまた、私には想像できるはずもなかった。 ■「社会人野球の象徴として…」 私は、12月8日(日)に放送される、社会人野球に人生をかけた佐竹さんに密着したドキュメンタリー「プロ野球じゃないとダメですか? ~トヨタ自動車 佐竹功年~」のディレクターを担当している。 6月の取材の後、佐竹さんの引退試合となる都市対抗野球大会、そして引退後のアメリカでの様子を取材し、佐竹さんの気さくな人柄がわかる場面に何度も出くわした。 最も印象的だったのが、東京ドームで行われた都市対抗1回戦の試合終了後のこと。劇的なサヨナラ勝利を飾ったトヨタ自動車、その流れを呼び込んだのは、直前にピンチを脱した佐竹さんの投球だったに違いない。ミスター社会人野球とも呼ばれていた佐竹さん、試合後の関係者入り口には、サインを求める多くのファンが殺到していた。これはプロ野球の沖縄キャンプなどではよく見る一コマ。 普段はサンデードラゴンズの取材をしている私。これはあくまで個人的な感想だが、サインに応じる選手を見ると心の底から応援したくなる。それは私自身の経験もある、サインをもらった喜びは生涯忘れることのない記憶として深く刻まれるからだ。