【幼少期から一流に触れて育つ】白洲次郎と白洲正子、小林秀雄を祖父母に持つ白洲信哉さんが語る、白洲式“見る眼の育て方:「はにわ」
白洲次郎と白洲正子、小林秀雄を祖父母に持つ白洲信哉さん。連載「白洲式“見る眼の育て方”」では幼い頃から一流のものに触れて育ち伝統や文化に造詣が深い白洲さんからモノの見極め方やセンスの磨き方を学んでいきます。 【写真集】貴重な「はにわ」の写真。国宝や家形埴輪など
古墳時代限定の遺物である埴輪は、しばしば土偶と混同されることがあるという。確かに土製の人形造形の意味では同じ延長戦上にあると思うが、縄文のような呪術性は薄れ性別も明確になり、職業例えば武人や巫女に力士など一目で判断可能になった。やはり千五、六百年前と一万年前とは長過ぎる時の隔たりがあり、古墳時代はだいぶこちらに近づいてきた感がある。 埴輪は、仏教伝来以前の素朴な日本の姿として、戦前は戦争を背景に近代政府が理想とする国家像と埴輪の美を重ね語られてきた。2度とあってはならない。 埴輪は人物以外に獣や鳥類などバラエティにも富んでいるが、個人的に最も惹かれる埴輪、石棒や土偶同様いつかは一体と念じているのが家形埴輪(いえがたはにわ)だ。 埴輪の中でも最も古い時代に登場し、主体部の直上で出土することが多いことから、葬送儀礼と結びつき王の魂が住まう依代だとか、大嘗祭(だいじょうさい)における真床追衾(まとこおうふすま)のような祭儀が行われたとか諸説ある。西都原(さいとばる)出土のそれや今城塚出土の造形美は彫刻の誕生と言ったら言い過ぎであろうか。土偶以来の無邪気な生への讃歌とは対極の、明確な「家」のモデルと意味があり作家性に溢れた逸品だ。
▼白洲信哉 1965年東京都生まれ。細川護煕首相の公設秘書を経て、執筆活動に入る。その一方で日本文化の普及につとめ、書籍編集、デザインのほか、さまざまな文化イベントをプロデュース。父方の祖父母は、白洲次郎・正子。母方の祖父は文芸評論家の小林秀雄。