ゲストが喜ぶ、建築家・芦沢啓治流のおもてなし術
海外クリエイターの新たな拠点にもなっているという、建築家でデザイナーの芦沢啓治さんが自らリノベしたユニークな小石川のゲストハウス。その成り立ちと、芦沢さん流のおもてなしとは?
建築家・デザイナーとして活躍するかたわら、東日本大震災をきっかけに石巻工房を立ち上げた芦沢啓治さん。東京ショールームのために見つけた物件は、文京区・小石川の築約50年の元印刷工場だった。 写真 ゲストハウス2階の共有リビングルームは、二間続きの和室。石巻工房や天童木工の家具でしつらえられている。窓の外はテラス。もう一方の部屋にはソファも。 芦沢啓治/KEIJI ASHIZAWA 芦沢啓治建築設計事務所代表。2011年の東日本大震災後、石巻工房を創立。家具デザインから住宅、大型建築の設計まで手がける。www.keijidesign.com/
築約50年の元工場のゲストハウスで日本文化体験
「最初は1階だけを借りるつもりでしたが、オーナーと話をするうち、2階も使ってもらって構わないと言ってもらい、元住居なのだからゲストルームにしてみようということに」と芦沢さん。天井高3メートル20cmの1階をショールーム兼オフィス、2階はゲストルームとしてリノベーションし、2015年にオープンした。 2階はキッチンとダイニングに隣接する二間続きの和室のほかに個室が3室。洗濯機も備えられ、長期滞在が可能だ。 「日々のメンテナンスは、各国から来るインターンの担当。大人数のパーティも多いので、採用条件は料理ができることも重視しています(笑)」と話す芦沢さん。 写真 左上 シンク下の棚に並んだ石巻工房のボックスに食器や調理器具、食材が収められている。慣れないゲストでも使いやすいつくり。 左下 キッチン、バスルームなどの水回りは重点的にリノベーションした。 右 共有のキッチンとダイニングスペース。キッチンは芦沢さんがデザインしたオリジナル。
迎えるゲストは、月に2~3組。昨年立ち上がったブランド、カリモクケーススタディでコラボレートしたノームアーキテクツのフレデリック・ウェルネルはリピーターだ。つい先日はフラマのニルス・ストロイヤー・クリストファーセンも夫婦で滞在していた。 「海外のクリエイターに滞在してもらって一緒にコンペに参加するなど、仕事の延長線上で使うことも多いですね。食事をとりながら打ち合わせをするなど、家族のような付き合いができることで得られるものは大きい」 写真 左 イサム・ノグチの照明は海外ゲストにも大人気で、買って帰る人が多いそう。 右 石巻工房のショールーム兼オフィスとして使用している1階が作業場で、ゲストルームにした2階にはその家族が住んでいたという。近所には同じような工場が多く立っていたが、多くは取り壊されてマンションや建て売り住宅になっている。