「クビが頭をよぎりました」 中日・山本拓実が辿り着いた“負のスパイラル”から抜け出す答え
「そうですね。去年までは……」 今年5年目を迎えた山本拓実は一拍置いた。4年間で28試合5勝6敗、防御率4.30。市立西宮高校からドラフト6位で中日に入団。1年目に初登板を果たし、2年目は初勝利を含めて3勝。身長167センチながら、腕を振って真っ直ぐを投げ込む強気のピッチングが持ち味だ。しかし、3年目以降は伸び悩んだ。制球を乱し、連打を食らい、失点を重ねた。時に先発、時にリリーフと役割もまちまち。足踏みが続いた。 「正直、自分を見失っていました。仁村(徹・二軍監督)さんからも『このままでは中途半端なピッチャーになるぞ』と言われていました」 山本は多くのプロ野球選手が経験する“負のスパイラル”に陥っていた。誰しも魅力があってこの世界に入る。しかし、必ず壁に当たる。すると、課題が出る。当然、原因を探り、見つける。次に試行錯誤し、克服に励む。この過程の何が悪いのか。 「コーチからのアドバイスもたくさん頂きました。今は情報がどんどん入る時代なので、本やTwitter、動画サイトでいろいろな投手のフォームをチェックしたり、トレーニング方法を勉強しました。特にコロナ期間中は引き出しが増えました。でも、今思うと、取り入れ過ぎました。気付いたら、いつもマウンドで自分と戦っていたんです」 体調は日による。 「今日は体が開いているなとか、腕が振り遅れているなとか、試合中にすぐ分かるんです。すると、修正法を思い出して試すんですが、うまくいきませんでした。逆に体が万全で球速も出ているのに、イメージと違った打ち取り方だと、今度はそれが気になってすごく気持ち悪い時もありました」 悪い日はズルズル。良い日もモヤモヤ。毎日、「なぜだ」がグルグル。矢印はいつも自分に向いていた。この過程こそ終わりの始まりなのだ。 「不安だから、練習はガンガンするんです。でも、修正できずに疲れ果てる。その体でまた追い込むから、余計崩れるという繰り返しでした。去年の夏頃、クビが頭をよぎりました。ドラフト6位が鳴かず飛ばずで、次の年には大卒ルーキーが入って来る。これはやばいなと」