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話題作『Helltaker』の魅力に迫る!陽炎01型氏インタビュー「困ったら風呂入って飯食って寝ましょう」【有志日本語化の現場から】

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陽炎01型氏の代表作(有志翻訳)『Helltaker』 パズルゲームの中に様々な魅力が凝縮された話題作 海外のPCゲームをプレイする際にお世話になる方も多い有志日本語化。今回は特別企画として、有志日本語化Modの登場により国内で注目を浴びる話題のフリーゲーム『Helltaker』の魅力をご紹介し、同作の有志日本語化だけでなくいくつもの商業タイトルを手掛ける陽炎01型氏のインタビューをお届けします。 関連画像を見る 日本語化とは海外のゲームを日本語で遊べるようにすることです。その中でも、デベロッパーやパブリッシャーによる公式の日本語化ではない、ユーザーによる非公式な日本語化を有志日本語化(有志翻訳)と呼びます。一般的にボランティアで行われ、成果物は無償で配布されます。 有志日本語化には、デベロッパーやパブリッシャーが許可する範囲内で行われるものと、無許可のものがあります。許可されているものには、Mod(ユーザーによる改造)が公式に認められている場合や、直接許可を得ている場合などがあり、最近はインディーゲームを中心に有志日本語化が公式日本語版として採用される例も出てきています。 連載第10回はプロのゲーム翻訳者である陽炎01型氏に話を訊きました。陽炎01型氏は『Helltaker』『VA-11 HALL-A PROTOTYPE』『We Become What We Behold』などの有志翻訳を手がけ、公式翻訳には『The Adventures of Fei Duanmu 端木斐异闻录』『夜半の夏、地下鉄にて』『Clea / 克莉』などの代表作があります。また、現在『CODE CRACKER 代码破译者』の公式翻訳を手がけています(近日アップデートで実装予定)。 陽炎01型氏 略歴 ゲーム翻訳者(英日、中日)。ゲーム翻訳者歴2年2か月(兼業2年、専業2か月)。 有志翻訳『Helltaker』『VA-11 HALL-A PROTOTYPE』など。 公式翻訳『The Adventures of Fei Duanmu 端木斐异闻录』など。 話題のフリーゲーム『Helltaker』の魅力とは? 『Helltaker』はポーランドのイラストレーター・映像作家であるVanripper氏が制作し、2020年5月11日にSteamで無償公開したパズルゲームです。記事執筆時点でSteamのレビューは“圧倒的に好評”。陽炎01型氏の制作した日本語化Modが公開されると日本でも人気に火がつきました。 一見なんの変哲もない『倉庫番』風のパズルゲーム プレイヤーは主人公を操り『倉庫番』ライクなパズルを解きながらストーリーを進めていきます。こう書くと一見地味なゲームのようですが、実際はまったくの逆。テンポよく進むゲームに魅力的なキャラクター、それを支えるビジュアルと音楽がバランス良く融合しており、この絶妙なバランスに多くのプレイヤーが魅了されました。 主人公は実に男らしい理由で単身地獄に降り立つ そもそも主人公がパズルを解く目的は、悪魔の娘たちを集めてハーレムを作るためという破天荒ぶり。登場する悪魔は一癖も二癖もあるつわもの揃いで、彼女たちをハーレムに加えるには、ひとりひとりの性格に応じた口説き文句が必要です。陽炎01型氏は本作の魅力を語る上で欠かせない会話シーンを、その魅力を損なうことなく翻訳しました。 悪魔の口説き方を間違えると即座にゲームオーバー ゲームの難易度設定も絶妙です。序盤は楽にクリアできますが、ストーリーが進むにつれて地獄らしい心地よい苦しみを味わうでしょう。しかし、安心してください。失敗しても一瞬で最初からやり直せますし、どうしても解けないパズルはスキップすることができます。 パズルをスキップしたいと思う弱い心は悪魔の誘惑か? 『Helltaker』ゲーム本体は完全に無料で配布されています(アートブックDLCは有料)。以下のインタビューを読んで興味を持たれた方は、ぜひ一度プレイしてみてはいかがでしょうか。クリアした後で陽炎01型氏が公開している「Helltakerほんやく後記」を読むと、翻訳の裏側をさらに深く知ることができます。 『Helltaker』(Steam) 『Helltaker』日本語化Mod(Twitter) 「Helltakerほんやく後記」 『Helltaker』日本語化Modの作者に訊く 手持ちのカードで切れる全力を尽くしたしだいです ――どうしてゲーム翻訳者になったのですか? 陽炎01型氏実はもともと英語が苦手で、祖父の助言を受けて英語に親しむために翻訳を始めたのがきっかけです。最初に訳したのは『Company of Heroes』というRTSのModでした。ゲームが日本語に対応したので、それまでリリースされていたModが日本語で表示できるようになったのですね。Modの翻訳を通じて海外の友人が増え、彼らのゲームを訳すようになって今に至ります。 ――どのような助言を受けたのですか? 陽炎01型氏「お前は英語を好きになるところから始めないといけない。基礎を身につけ、好きになればあとは勝手にできるようになる。好きな英語の本でも何でも触ってみなさい。」おおよそこのような内容でした。 ――ゲームは以前から好きでしたか? 陽炎01型氏父が海外ゲームオタクだったので、その影響ですね。よく『バトルフィールド1942』や『StarCraft』などを遊んでいました。思い出深いのはFPSの『Marathon』です。日本語版説明書の訳がパンクで、私の訳に大きな影響を与えました。 ――海外ゲームをプレイしていても英語に苦手意識があったのでしょうか? 陽炎01型氏英語が読めなくてもピクトグラムや日本語の説明書があることが多かったので、プレイに支障はなかったですね。今にして思えば、中学時代の英語教師との不仲が英語に対する苦手意識に繋がったものと思います。 ――今回、プロの翻訳者が無償の有志翻訳を手掛けたのはなぜですか? 陽炎01型氏無償で公開されている作品で、私が気に入ったものは無償で訳してもよいという持論を持っています。翻訳で好きな作品がみんなもプレイできるようになれば、こんなに嬉しいことはないからですね。 ――有償の作品を翻訳する場合は仕事として請け負うのでしょうか? 陽炎01型氏基本的にはそうです。すぐに料金をいただけなくても、後払いにしたり、私の仕事を手伝ってもらったりと何らかの対価をいただきます。もちろん、有償作品の無償翻訳を批判するものではありません。あくまで一個人のふんわりとした指針です。 陽炎01型氏の代表作(有志翻訳)『Helltaker』 ハーレムに入った悪魔は攻略のヒントをくれることも ――日本語化Modの公開にこぎつけるまでの経緯を教えてください。 陽炎01型氏特別なことをしたわけではありません。作者のVanripper氏にTwitterのダイレクトメッセージでテキストの提供を依頼したところ、土曜日に誰でも翻訳できるようにする旨のお返事をいただきました。どうやら、私以外にも翻訳希望者が多数いたようです。技術的な点をお話すると、Unity製のゲームは他のゲームエンジンよりも外部の人間が弄りにくい傾向にあります。テキストの提供を依頼したのはこの理由からです。 ――日本語化Modが日本における本作の人気に火をつけたことをどう思いますか? 陽炎01型氏嬉しいですね。素晴らしい作品はみんなに触れられるべきです。アートブックDLCの売れ行きも快調なようで、Vanripper氏も創作活動を行う原資を得られたことと思います。これをきっかけに、さらに活発な活動をしてくださることを期待します。 ――作者のVanripper氏とは旧知の仲なのですか? 陽炎01型氏いえ、名前を知ったのは『Helltaker』のリリースからです。ですが、Vanripper氏の作品「Daystone」は過去に視聴していました。こちらも素晴らしい映像作品ですね。ポーランドには素晴らしい作品を生み出す土壌があるのかもしれません。 ――わずかな文章からどのようにキャラクターを性格づけしましたか? 陽炎01型氏セリフの持つ感情と、キャラの立ち絵から判断しました。人間はコミュニケーションを取る際、実際に話す内容よりもその相手の表情や仕草をもとに行うとされています。幸い悪魔と天使たちは表情豊かなため、個性豊かなキャラクターづけができたと思います。学生時代、演劇を嗜んでいたのが功を奏したのかもしれませんね。 ――裏設定など翻訳者にわからない部分は作者に質問したのでしょうか? 陽炎01型氏おおよそアートブックに書かれていたので特に質問はしていません。また、気になったところはPatreon特典のDiscordサーバーで既に質問されていたので、そこは参考にさせてもらいました。 ――仮に将来続編が開発される場合、矛盾が発生するとは思いませんでしたか? 陽炎01型氏一瞬考えました。ですが、続編は続編に合わせて訳すので、今は手持ちのカードで切れる全力を尽くしたしだいです。 ――個性あふれるキャラクターの中でお気に入りは誰ですか? 陽炎01型氏みんな素敵なので選ぶのは難しいですが、強いて選ぶならズドラーダ嬢です。奔放に罵りながらタフに生きる姿はたくましくていいですね。絶対友だちにしたくありませんが。天使の上司、私は上級天使と勝手に呼んでいますが、彼女はセリフこそありませんが好きなデザインです。ぜひファンアートが欲しいところですね。 陽炎01型氏の代表作(有志翻訳)『Helltaker』 お気に入りだと語る性悪悪魔のズドラーダ ――同じゲーム好きとしてマリーナをどう思いますか? 陽炎01型氏マリーナ嬢も好きですね。現在翻訳中の「Prologueまんが」の中でチョイスした作品が本当にゲームオタク心を理解しています。彼女の影響でGOG.com版『Heroes of Might and Magic 3』を購入したところ、ハマってしまいました。 陽炎01型氏が翻訳した『Helltaker』の「Prologueまんが」(Twitterで公開中) ゲームオタク心を持つ毒舌悪魔のマリーナ ――マリーナのセリフ“turn based strategies”を“ターン制シミュレーションゲーム”と翻訳したのはなぜですか? 陽炎01型氏“ストラテジー”が日本語であまり馴染みがない言葉だから“シミュレーション”に変えたと記憶しています。ですが、SteamのPCゲームをやる人が“ストラテジー”を理解していない仮定は今にしてみれば浅はかだったような気がします。 ――ですが、主人公のセリフ「ターン制シミュ同好会だ」は語呂がいいですね。 陽炎01型氏セリフの訳文は全て口に出して語呂をチェックしています。テンポのいい口語文は大好きですね。 ――大胆な意訳もありますね。例えば、この訳はどのような発想から生まれたものですか? (原文) It’s hard to explain the feel. (訳文) 何を言っているのかわからないと思うが、恐ろしいものの片鱗を味わった。 陽炎01型氏ある種の連想ゲームだと思ってください。文章を見た時にパッと思いついた胡乱な事柄も全部入れて煮込みました。お味はいかがでしたか。お気に召してくださればよいのですが。 陽炎01型氏の代表作(有志翻訳)『Helltaker』 大胆な意訳(パロディ)が隠されていることも ――翻訳者から見た本作の魅力をお聞かせください。 陽炎01型氏短いながらもキャラクターの魅力を詰め込んだ意欲作だと思います。ビジュアル、音楽、テキスト、テンポ、ゲームデザインの全てが調和してひとつの総合芸術をなしているように感じました。プレイ時間が短いことを除けば凄いゲームですね。フリーゲームとしては十分なボリュームだと思います。 ――あえて一番優れている点を挙げるとすれば? 陽炎01型氏一番はビジュアルですが、音楽の良さも際立っていたと思います。パズルに苦戦すると音楽も恨めしくなるのがこの手のゲームの性ですが、『Helltaker』ではまったくそのようなことがありませんでした。 ――これからプレイする方に一言お願いします。 陽炎01型氏ヒントを見て、分からなかったらEscでスキップしましょう。たのしんでね! <cms-pagelink data-text=”次ページ:プロの中日翻訳者が中国のゲーム事情を語る!” data-page=”2” data-class=”center”></cms-pagelink> 陽炎01型氏の代表作(有志翻訳)『VA-11 HALL-A PROTOTYPE』 翻訳にまつわるエトセトラ 有志翻訳の多くはプロのものに引けをとらないと思います ――ゲーム翻訳に一番必要な能力はなんだと思いますか? 陽炎01型氏忍耐力だと思います。翻訳には完成の理想がありますが、そこにたどり着くまでは何かしら苦労します。それを耐え忍ぶことができれば立派な翻訳者だと思います。これは自戒でもあります。 ――苦労が多いのはどの部分ですか? 陽炎01型氏作中の固有名詞、特に人名の良い訳が思いつかないと大変ですね。どうカタカナにするか、音に合わせるか、字に合わせるか、どの国の言葉をベースにするか。重要ワードになると絡む文も多いので少し苦しくなります。だいたい全く関係のない箇所を訳しているとふと思いつくので、とりあえず適当なものを置いて後で一発変換しましょう。止まるのは最後です。 ――特に翻訳が難しい表現はありますか? 陽炎01型氏ゲーム翻訳に関しては一人称選びに苦労します。キャラクターが自分自身を“どう見て欲しいのか”を示す言葉なので、慎重に選ぶ必要があるからです。 ――英語では自分自身を指す代名詞は“I”だけですが、日本語は非常に多いですね。 陽炎01型氏中国語でもほとんどが“我”なので、どの一人称にするべきか悩みます。幸い、訳しているうちに定まるので大丈夫です。 ――どの一人称を選ぶかの基準はありますか? 陽炎01型氏内向的か外交的か、当人のジェンダー意識、あとはセリフ回しなどを参考にしています。ちょうどいい一人称を探るには、現実で様々な人と関わることが大事かと思います。これも自戒です。 陽炎01型氏が現在翻訳中の『CODE CRACKER 代码破译者』 作者はインタビューにも登場する致意氏(画面は開発中のもの) ――翻訳を通じて新しい知識が得られることはありますか? 陽炎01型氏あります。主に軍事・経済分野を専門としていたのですが、翻訳を始めるようになり、専門外の分野に触れる機会が多くありました。とくに致意氏の手がけた作品では、彼が理系ということもあって理化学や法医学について学ぶきっかけになりました。作中に登場する教授が法医学の講義をするのです。推理にもかかわるシーンなので、よく調べたと記憶しています。 ――辞書はどのように利用していますか? 陽炎01型氏最近はオンライン辞書がかなり充実し、紙のものを繰る機会は少なくなりました。強いて言えば古語辞典や、昔の30年以上前の国語辞典を引くことが多いです。遥か過去の会話シーンや、お年寄りのキャラクターが言葉をどう捉えていたかを探るツールとして使っています。現代の言葉はオンラインで変遷を追えますが、昔の資料は紙が主ですからね。 ――どのようなツールを使用していますか? 陽炎01型氏実は翻訳支援ツールはあまり使っていません。OmegaTくらいでしょうか。普段は主にVisual Studio Codeを使っています。というのも、日本語表示のためのコード書き換えや、開発版を弄る機会が多いからですね。拡張機能も充実し、大変満足しています。日本語吹き替えの台本を書く場合はO’s Editor2を使います。表示スタイルの切り替えと、実際の印刷物とのギャップが少なく重宝します。 ――日本語吹き替えにはどんな苦労があるのでしょうか? 陽炎01型氏時間的制約がなかなか厳しいですね。訳文を実際に読むのは私ではなく役者さんなので、収録現場で台詞に改変の余地を持たせたり、アドリブを入れられるように早めに台本を作っています。 ――収録現場にも立ち会うのですか? 陽炎01型氏そうですね。私が日本語監修を兼ねることが多いですから。趣味で吹き替えをすることもありました。役者さんたちは言葉を使うプロなので、訳している時には気づかなかった言い回しを提案してくださることもあります。これはありがたいですね。勉強になります。 陽炎01型氏の代表作(有志翻訳)『We Become What We Behold』 ――プロの翻訳者になる上で、有志翻訳の経験が役に立ったことはありますか? 陽炎01型氏翻訳作業そのものは有志翻訳もプロ翻訳も大きな差はないと思います。ですが、翻訳環境はプロ翻訳の方が厳しいことが多いです。今訳している文章はどこで使われるのかを察する力は有志翻訳で培われるかと思います。 ――プロの翻訳者の目から見て優れている有志翻訳作品があれば教えてください。 陽炎01型氏有志翻訳の多くはプロのものに引けをとらないと思いますが、強いて挙げるならyagimaya0401氏の『Total War』シリーズの日本語化でしょうか。『Total War: ROME II』の時代に対する理解の深さと、『Total War: WARHAMMER』シリーズの定訳に縛られない的確な翻訳には唸らされます。 ――有志翻訳と商業翻訳はどのような関係を築くのが理想だと考えますか? 陽炎01型氏おおよそ現状維持でいいと思います。どのゲーム開発者もローカライズにかけられる予算が大きいわけではないので、様々な形態が乱立するのはやむをえないと思います。また、有志翻訳があるからといって、プロに翻訳を依頼しないわけではありません。 陽炎01型氏の代表作(公式翻訳)『The Adventures of Fei Duanmu 端木斐异闻录』 中国翻訳最新事情 自由な表現ができる前提があって作品がつくられますから ――以前と比べてゲームの中日翻訳の仕事は増加していますか? 陽炎01型氏私個人の主観ですが、増加しているように思います。中国経済の発展に伴い、パブリッシャーの経済力も強くなり、多くの作品が日本語に訳されて進出しています。日本での売れ行きは上々のようで、今後もリリースが続くことでしょう。 ――どのような仕事が多いのでしょうか? 陽炎01型氏依頼の多くはソーシャルゲームの案件です。この手のゲームは継続してコンテンツを出す必要があるため、依頼が絶えません。ですが、私個人の趣向で実際にお請けするのはインディー作品が多いです。インディーに対して中国のAAAにあたるのは国策ゲームなどでしょうか。あまりに政治色が強いので国外に出ることはほぼありませんね。 ――国外に出ないゲームとはどのようなものですか? 陽炎01型氏愛国精神を涵養する軍事的なものですね。『強軍』などがそれにあたり、尖閣諸島沖の日本艦隊を中国軍の攻撃機が殲滅したりします。以前Steamにもリリースされたのですが、残念ながら中国国外でのプレイはサポートしていないようです。正直なところ、出来はいまひとつです。ノウハウがまだ足りないのでしょうか、作り慣れていない印象を受けました。そのあたりは中国のインディーゲーム開発者やMod開発者に一日の長があると思います。 ――インディーでは優れた作品もあることを考えれば、官に近い話なのでしょうか? 陽炎01型氏そうですね。国からの支援金が出るので様々な作品が出ましたが、作品の性格上、国外市場は見込めないので伸び悩んでいるようです。 ――そのような作品は一般市場で販売されているのですか? 陽炎01型氏国策推進が主目的ですから、販売されていることは少ないですね。実は、中国はあまりPCゲーム販売市場が成熟していません。国外作品を禁じた時代があまりにも長く、海賊版がはびこっています。一方、モバイル市場では日本同様ソーシャルゲームが巨大な市場を作っているのが印象的ですね。 ――過去のインタビューでは中国の方が「国外パブリッシャーの多くは中国で公式にゲームを販売していない」と話していました。 陽炎01型氏遺憾ながら、事実だと思います。そのため中国Steamでは日本や欧米諸国と比べて正規価格を安くしてゲームを販売しています。ロシアも同様ですね。 陽炎01型氏の代表作(公式翻訳)『Clea / 克莉』 ――中国語特有の翻訳が難しい表現はありますか? 陽炎01型氏中国を舞台にした作品だと、料理の翻訳に頭を悩ませます。餃子や饅頭など、日本でもおなじみのものならともかく、日本語の定訳がないものは大変です。現地の漢字を日本のものに置き換えてルビや訳注をつけたり、どうしても漢字が表示できずに、改変許可をいただいたフォントをテキストに合わせて調整したりすることもありました。苦労はしますが、こうした工夫が作品への没入感を高めると信じています。 ――フォントでも苦労があるのですね。 陽炎01型氏ウェブ媒体では中国語フォントが使えますが、ゲームでは別個埋め込んだり、フォント指定を変えたりして対応します。フォントの権利関係は、許可をいただけるよう交渉すればだいたい大丈夫ですね。フォントの埋め込みではなく、画像のみの利用が可能な場合は、それを利用することもあります。 ――中国の四字熟語や漢詩はどのように翻訳するのですか? 陽炎01型氏やはり苦労しますね。四字熟語やことわざでは日本で同じ意味のものをあたって、「~不打不相、雨降って地固まるっていうじゃないか。」などと両文併記したりします。漢詩はセンスが問われて大変ですね。日本語で韻を踏むのは違った言語感覚が必要です。 ――中国の法律や政策は翻訳に影響を及ぼしていますか? 陽炎01型氏翻訳についてはあまり影響はありません。ですが、ゲーム開発の現場では政府の制御下に置けないゲーム開発を統制しようとする動きが目立ちます。中国のゲーム作品が今後国外でリリースできなくなるのではないかと危惧しています。 ――中国国内だけでなく、国外でのリリースに影響を及ぼす可能性もあるのですか? 陽炎01型氏政府などに“自粛”を求められると、パブリッシャーが統制のきかない国外市場への参入を取りやめる可能性があるからです。中国仕様のSteamがリリースされる際も中国内外のゲーム交流がなくなることが危惧されました。一番恐ろしいのはクリエイターたちの自粛です。自由な表現ができる前提があって作品がつくられますから。 陽炎01型氏の代表作(公式翻訳)『The Adventures of Fei Duanmu 端木斐异闻录』 ――中国の有志翻訳の現状について教えてください。 陽炎01型氏私の観測する限り、中国の有志翻訳コミュニティは2種類に分類できます。 ひとつは大規模でオープンなコミュニティ。開発側から公式中国語化という形で翻訳環境が与えられているとこうなることが多いです。訳の質はそれなりですが、翻訳者の数と勢いでものすごい速さで中国語化してしまいます。「とりあえずやってみよう」というハングリーな精神が完成にこぎつけてしまうのでしょうね。 もうひとつはアングラ的で小規模ながらも強力なコミュニティ。中国では国外作品を堂々と輸入できない時期が長く続きました。その一方で、解析技術が進展し、だいたいのゲームの中国語化にこぎつけています。こちらの翻訳者は人数こそ少ないものの精鋭が揃い、クセのある英文も難なく訳してしまいます。 どちらも性格は異なりますが、文化的な背景があってユニークですね。 ――アングラなコミュニティの人間がオープンなコミュニティに加わることはありますか? 陽炎01型氏それはあると思います。ただ、中国百度内のコミュニティは少し閉鎖的な傾向があるように思いますね。友人同士しか入れない小コミュニティが乱立しているというか、個人的にはDiscordのサーバーが近いかと思います。もちろんこれは外国人から見た私見なので、実際は違うかもしれません。 陽炎01型氏の代表作(公式翻訳)『Clea / 克莉』 プロのゲーム翻訳者からのメッセージ 悩んでいる暇があったら行動することが大事です ――プロ・アマを問わず、ゲーム翻訳を志す方はなにから始めれば良いですか? 陽炎01型氏人それぞれだと思いますが、私は好きな作品から訳すことをおすすめします。自分の実力を知るいい機会になります。もちろん翻訳学校などに通って基礎を身につけるのも良いと思います。とりあえず悩んでいる暇があったら行動することが大事です。 ――有志翻訳者からプロの翻訳者になるにはなにが必要だと思いますか? 陽炎01型氏二つあります。まずは人脈でしょうか。有志翻訳で知り合ったゲーム開発者の繋がりは「次の仕事」を呼び、仕事の実績は「新たな仕事」を呼びます。続いて勇気もあるといいでしょう。自分が気になったゲームの開発者へコンタクトしたり、翻訳会社へのトライアルに挑戦すれば道は開けるかもしれません。とりあえず動いてから考えるくらいでいいと思います。 ――これからゲーム翻訳者を目指す方へ一言お願いします。 陽炎01型氏困ったら風呂入って飯食って寝ましょう。 ――最後に、ゲーム開発者に伝えたいことはありますか? 陽炎01型氏メールやSNSなどでコンタクト先を設けていただけると助かります。お伝えしたいことがあってもアクセスできないと大変でして。 ――本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。

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