新たなる歴史の始まり…ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage開幕
2020年12月12日(土)、ミュージカル『新テニスの王子様』The Fist Stageが幕を上げた。 【写真を見る】「新テニミュ」ゲネプロの様子(全5枚) 同作は、許斐 剛の漫画『テニスの王子様」の続編である『新テニスの王子様』が原作。新テニミュは、テニミュとはひと味違った作風に仕上がっていた。 初日に先立ち行われたゲネプロでは、「全く新しいテニミュ。しかしテニミュの魂はきっちりと繋がれている」と強く感じさせてくれた。 ストーリーは原作通り、全国大会から数カ月が経った時点から始まる。大会で活躍した選手たちに、高校日本代表・U-17(アンダーセブンティーン)合宿への招集がかかり、各校の代表選手たちが再び顔を合わせる。 そこで待っていたのは、圧倒的な実力を持つ高校生たちとコーチたち。越前リョーマたち中学生の挑戦が始まる――。 歌のタイトル、映像も含めた細かい演出、ストーリーの構成などのネタバレは避けながらゲネプロの様子をお届け。まっさらの状態で観劇に臨みたい人は観劇後に読んでほしい。 『テニスの王子様』がスーパー中学生テニスプレイヤーたちの切磋琢磨と成長が描かれる物語であるとしたら、『新テニスの王子様』は強大な壁に挑戦し、あがき苦しむ少年たちの物語だ。 『テニスの王子様』で人知を超えたプレーを見せてくれていた彼らも、高校生たちやコーチ陣の前ではまだ中学生なのだなと原作で感じていたが、それは舞台でも実感させられる。 今回のキャストたちは大きく4つに分類できる。 主演の越前リョーマ役・今牧輝琉をはじめとしたフレッシュな顔ぶれ。切原赤也役・前田隆太朗と遠山金太郎役の平松來馬のテニミュへの出演経験者。歴代のテニミュファンには嬉しい小野健斗(徳川カズヤ役)、相葉裕樹(入江奏多役/Wキャスト)といった安定した実力者揃いの高校生役。歌唱・演技・存在感ともに圧倒的なベテラン勢によるコーチ陣。 彼らが組み合わさることで、どのような舞台になるのだろうと発表時から楽しみにしていたが、実際に観劇してみて驚いた。ストーリーのテーマ、キャストたちの関係性がそのままぴったりハマっているからだ。 フレッシュな顔ぶれは、全国大会を経験してきたものの、格段に上のステージに投げ込まれた少年たちを連想させてくれる。迎え撃つは実力を持つ高校生たち、そして圧倒的に高い壁であるコーチ陣だ。 先輩たちが後輩たちを温かく迎え、見守りながらも、「さぁ、俺たちを超えてみろ」と腕を組んで待っている…そんな図が見えるようだ。 演出面では、テニミュで培ってきた技術が惜しみなく踏襲されている。これまでテニミュを観てきた層にも、今作から新たにこの世界に触れる人にも分かりやすい「これぞテニミュ」だ。 『テニスの王子様』というコンテンツを愛しよく知っているからこそ、かなう演出がそこかしこに見て取れた。長年の経験による自信がうかがえる。 テニミュファンであれば誰しも「楽しい時間の始まりだ」とときめくであろう、あの音が進化し、セットの一部も“新”らしく工夫が加えられている。 繋がり引き継がれた部分、ブラッシュアップされた部分、新たなる挑戦として加えられた“新”ならではの要素をそれぞれ楽しむことができる。 また、もちろんキャストは全員が”初代”。歌は全て新曲。何もかもが新しくわくわくする、ファーストステージの醍醐味だろう。 筆者はミュージカル『テニスの王子様』1stシーズンで、急激に盛り上がる周りの空気に乗り遅れてしまった苦い経験がある。新テニミュは今が始まりだ。ここから全てが始まる。 これまでのテニミュファンも、そしてこれから観に行く人たちも、どうかこの機会を逃さずにミュージカル『新テニスの王子様』の始まりを見届けてほしい。 撮影:ケイヒカル
広瀬有希