電子部品で広がる「コト売り」 サブスク型を新たな柱に 各社新事業に挑む
サブスクリプション(定額課金)型ビジネスに乗り出す電子部品メーカーが増えている。サブスク型は、通常の部品売り切り型とは異なり、事業が軌道に乗れば毎月安定した売り上げが得られるのがメリット。センサーや通信といった技術の組み合わせに加え、スタートアップとのコラボで事業を立ち上げる動きも目立ち始めた。 【関連写真】産業車両に取り付ける専用端末でサブスクを提供 アルプスアルパインは、仏シグフォックス社と京セラコミュニケーションシステムとの協業で、「物流遠隔監視システム」を提供している。このシステムは、アルプスが開発した物流管理用IoTデバイス「物流トラッカー」を活用した、物流用カゴ台車向けの追跡ソリューション。欧州での実証実験を経て、2年ほど前からサービスを開始しており、国際輸送物流世界最大手の独DHL社などが採用している。 北陸電気工業は、サブスク型IoTサービス「産業車両向けIoTシステム」を開発、提供している。専用端末を産業車両に取り付けることで、屋内外でシームレスに位置情報を把握できる上、内蔵された各種センサーを使って稼働や危険運転操作の情報を検知するシステムだ。クラウドにデータをアップロードすることで、サブスク提供するアプリからリアルタイムに情報を把握できる。「システムソリューション事業を今後、当社の第4の柱に育てていきたい」(加賀田松征執行役員営業マーケティング本部長)。 SMKは、「SAS(睡眠時無呼吸症候群)リスク可視化技術」を活用した専用アプリの開発を進めている。スマートフォンなどで就寝時の音声を録音するだけで手軽にSASのリスクを判定できるものだ。ディーイスム社とのコラボで開発を進めており、トラックドライバーやバス、タクシー運転手、危険を伴う現場に従事する現場作業員、潜在SAS患者などをターゲットに想定する。2025年から正式サービスの提供を予定し、「販売はサブスク形式で行う予定」(同社)。 中長期的な成長を目指す中、電子部品各社は、新規市場の開拓や新規事業の創出を掲げている。その1つとして、サブスク型ビジネスに着目している。 部品各社にとってサブスク型ビジネスは、ハードウエアを販売する「モノ売り」ではなく、ソリューションを販売する「コト売り」であるため、高い利益率が期待できる。各社は、既存ビジネスで培ってきたセンシングや通信、ソフトウエアなどの技術を組み合わせ、独自のIoTソリューションを提供するなどで、新たなビジネスモデルを構築しようとしている。
電波新聞社 報道本部