Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

【中国IT事情】清華大サイエンスパークは3兆円を資金運用

配信

ニュースソクラ

清華大の起業支援(中)コロナ・アプリ開発でも活躍、日本投資も650億円

 新型肺炎の拡大が収束しつつある中国では、更なる感染拡大を防ぐために携帯電話のアプリを通して個人や所属組織の情報共有が浸透している。  北京市では市当局がアリババ社と提携し、住所や勤務先および身分証や顔写真等の個人情報に加えて、毎日の体温を含めた健康状態や市外へ移動したかどうかのGPS情報をアプリを通して把握している。市外に出た際には携帯に警告が発信されるが、無視してもアプリのQRコードをスキャンすることで「問題あり」と他者に伝染可能性を把握される。  北京ではこれまで市外へ移動して戻った際には一律14日間の隔離であったが、今月20日より感染が深刻な朝陽区の住民以外は隣接する河北省や天津市への移動は隔離対象外となった。このような細かい条件に基づく政策の試行もアプリでの情報管理が効果を発揮している。  一方で上海を拠点とするStarymedia社は同様の機能にブロックチェーン技術を用いたGreenPassというアプリを開発し、主に国外への普及に努めている。中央集権的な情報管理を敬遠する利用者に対してもブロックチェーンを用いることにより情報の改竄防止や個人情報の保護を確保しながら、前述のアプリ同様の伝染可能性の判断を可能としている。  QRコードをスキャン後に緑色になれば「問題なし」と判断され、米国の医療系の事業所や研究施設で導入が進んでいる。  同社を率いるBrian Xin氏は清華大学のOBであり清華大学の起業システムから生まれた企業家の一人である。創業にあたり、同じ清華大学のOB達から初期投資や有形無形のサポートを受けたという。前回コラムで紹介した清華大学ベンチャー大会にも、彼のようなOB企業家たちが審査員およびスポンサーとして参画しており、後塵の育成や同輩の支援に尽力している。  清華大学が卒業生含め校友から受け取る寄付は2019年で国内最高の123億元(約1870億円)にものぼっている。今年は新型肺炎の影響下、大手不動産デベロッパーの万科集団創始者の王石氏が国内でも過去最高額となる54億元(約800億円)を寄付した。  これを受けて清華大学はわずか30日間で疫病対策を盛り込んだ公共衛生健康学院を急きょ設立している。王石氏はこれまでも清華大のMBAで講義をしたりベンチャー投資顧問の委員を務めたりと、大学との関係を繋いできた。  彼ら企業家と清華大起業エコシステムを融合的に包みこみ発展させる役割を担っているのが清華大学サイエンスパーク(TUS)である。  北京市の西北に位置する清華大学の正門前、すぐ隣にそびえ立つ一際巨大な四つの高層ビルが清華大学サイエンスパーク(TUS)である。77万平米の面積を擁し、その中に1500以上の企業が軒を連ねるTUSは、単一の大学が運営するサイエンスパークとしては世界最大規模である。  TUSの運営主体TUSホールディングスは2000年に設立され、現在では2000億人民元(約3兆円)の資産を運用している。特許申請件数の年間目標として年3000件を掲げる清華大学の技術を起業に移転するプラットフォームとして、半導体の紫光集団、PC製造やエネルギー分野に強い同方集団とともに清華大学の三大「校弁企業」の一角を占めている。  清華大学の起業エコシステムでは、アイデアを産み出す「創意」、そのアイデアを商品やサービスにする「創新」、ビジネスとして確立する「創業」、付加価値を社会に広げる「創造価値」、と四つの段階が認識されている。  主に前半の「創意」と「創新」を担うのが講義やベンチャー大会を主催するインキュベーション施設x-labであり、後半の「創業」や「創造価値」の分野を主に担うのがTUSである。  具体的には巨額の資産による金融面でのサポートや、人材育成、経営コンサルティングなどと共に、大学も含めて各企業や個人が融合的に繋がるような環境を提供している。例年交流や資金調達等に関する3000以上ものイベントが施設内のどこかで開催されており、入居者たちはこれらメリットを感じつつ近隣と比較してもむしろ割高な家賃を払っている。  TUSにオフィスを構えるBlockcoach社はブロックチェーンのコンサルティング業務を行っており、TUSでの交流を通してパートナー起業や顧客を獲得してきた。隣の清華大学のキャンパスにもふらっと出かけ、知り合いの教授と打ち合わせする機会もあるという。  以前には施設を訪れた世界的投資家であるジム・ロジャーズ氏にプレゼンも行ったりと、環境を活用している様子が見受けられた。  今では日本も含め国際的にもサイエンスパークの存在自体は珍しくないが、清華大学を拠点にするTUSは還流するカネと人材と技術のそれぞれの規模が圧倒的に巨大であり、結果として外部の市場でもたくましく発展していけるだけの有力な企業が涵養されている。  TUSホールディングスは総額650億円にもなる日本でのベンチャー投資を、2018年末より東京大学 と提携して始めている。日中経済にどのような効果をもたらすか要注目である。 ■小池 政就(清華大客員教授) 工学博士、清華大学客員教授。丸紅勤務、東大助教、日大准教授、衆議院議員を経て北京へ。 専門は国際関係、エネルギー、科学技術と幅広く、米国、英国でも留学および勤務歴あり。 現在はブロックチェーン企業の顧問も務める。

【関連記事】