JA農協&農水省がいる限り「お米の値段」はどんどん上がる…スーパーにお米が戻っても手放しで喜べないワケ
新米が店頭に並ぶようになっても、値段が下がらないのはなぜなのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「減反政策によってコメの生産量が減っており、新米が供給されても『コメ不足』であることに変わりはないからだ。JA農協はコメ不足を見越して、2024年産米は農家に支払う概算金を2割以上も上げた。値段は下がるどころか、今後ますます上がっていくだろう」という――。 【図表】日本だけコメの生産量を減らしている。1961年以降の生産量推移。 ■新米が高いのは「コメ不足」が続いているから 農林水産省は9月になれば新米(2024産米)が供給されるので、コメ不足は解消されるという見方をしていた。確かに新米は供給されたが、値段は一向に下がらない。 坂本哲志農林水産大臣は「今後、新米が順次供給され、円滑な米の流通が進めば、需給バランスの中で、一定の価格水準に落ち着いてくるものと考えています」(9月6日記者会見)と主張している。 「需給バランスの中で」とは、供給が増えるから価格は低下すると言っているのである。だが、実際にそうならないのはなぜなのか。それは、「需給バランス」についての農林水産省の見方は間違っているからだ。 コメ不足が起きた7月末の在庫は前年同月期より40万トン少ない82万トンと近年にない低水準となっていた。農林水産省はこれを「猛暑による高温障害」や「インバウンドによる需要増」の影響と説明したが、根本原因には減反によるコメの生産量減少があると前稿で解説した。 JA農協と農林水産省は、コメの需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反を進めてきた。その結果、昨年産は前年の670万トンから9万トン減少していた。昨年産のコメ供給量は、猛暑の影響を受ける前から減反で減少していたのだ。 高温障害で減少した供給は20万トンと推定され、農林水産省はインバウンドなどによる消費増は11万トンとしている。これらに減反による減少分9万トンを合わせると、トータルで40万トンの不足になる。これは7月末の在庫が前年同月比で40万トン減少していることと符合している。 今年産のコメ生産は前年並みなので、来年8月頃の端境期にはまた同じことが起こるだろう。今年も猛暑だった。8月に集荷された新米の一等米(破裂した粒や白濁した粒など被害粒の少ないコメ)の比率は前年を5.2%下回る63.7%で16年ぶりの低い水準となった。今後収穫される予定のコメの被害は少ないと言われているが、ある程度の被害は覚悟していたほうが良い。さらに今年はコメ不足によって、本来なら10月から食べ始める新米を先食いしている。来年は今年以上にひどいコメ不足に陥る可能性が高い。 農林水産省の見方と異なり、需給バランスは、コメ不足だ。だから、一向に米価は下がらないのだ。