ミスチル「終わりなき旅」が、16歳の蓮佛美沙子を支えた…今でも聴くときは“正座する勢い”
伊藤潤二や角田光代ら稀代のストーリーテラーを戦慄させた小説を、俳優でもある齊藤工監督が実写映画化。その『スイート・マイホーム』(9月1日公開)で、新居に降りかかる恐怖と絶望に打ちのめされる賢二(窪田正孝)の妻・ひとみを、蓮佛美沙子が演じた。かつて『犬神家の一族』で俳優デビューした蓮佛が、再び“家”や“家族”の仄暗き秘密に巻き込まれる。「ホラーは苦手……」と言いながらも、透き通った肌がホラーな暗闇にピッタリ映える逸材。作品についてはもちろんのこと、かつてJホラーの現場で体験した怪異や“ミスチル沼”にハマった理由まで独占告白してくれた。
齊藤工監督が丁寧に拾ってくれたリアルな反応
──俳優デビューが『犬神家の一族』(2006年)であり、『きれいのくに』『鵜頭川村事件』など奇妙かつ心をかき乱すような重厚な作品が似合う蓮佛さん。今回もズシンとくる怖い作品ですね! 確かに怖い作品です。作品の題材も“家”の秘密と謎に迫るホラーミステリーであり、得体のしれない何者かの影に怯えるようなお芝居もありました。とはいうものの、自分の中でホラーな演技をしようという意識はありませんでした。その方向性は齊藤工監督の意向でもあったと思うので、夫である賢二(窪田正孝)に対して、そして家の中で起こる事象に対して妻のひとみとして、ただただ反応する。その日常的なリアリティを齊藤監督が丁寧に拾い上げてくださいました。 ──ホラーな演技という典型からあえて外したということですね? あえてというか、「背後から何者かの視線を感じて振り返る」という表現も大仰にするのではなく、基本的にはナチュラルに。身近な例えだと、「誰かに肩をトントンされて振り返ったら誰もいなくて怪訝に思う」くらいの、リアルな反応をイメージして演じました。この映画で描かれる恐怖は幽霊が見えてビックリ!というようなジャンプスケア的恐怖ではなく、日常の中で起こる些細な異変の積み重ねが生み出す恐怖です。そのため序盤はホラーというよりもホームドラマのように見えるかもしれません。夢のマイホームを手に入れて幸せな一家がどうなっていくのか? 観客の皆さんには一家がたどり着く衝撃的結末を見届けていただきたいです。 ──本作への準備として参考にした怖い映画はありますか? ひとみという役には継承というテーマも含まれていることから、キャラクターの参考にと齊藤監督から『ヘレディタリー/継承』(2018年)をおすすめされました。怖くて目をそむけたくなるような瞬間もありましたが、見事なストーリーテリングに最後まで引き込まれました。『スイート・マイホーム』同様に怪物や幽霊などが出てきて驚かせて怖がらすのではなく、心の奥底にある人間の闇が怖いというドラマ部分に魅了されました。 ──ちなみにホラー作品はお好きですか? 実は大の苦手です……。大きな音で急に脅かしてくるような衝撃は心の準備が出来なくてシンプルに怖い。かといって人間が怖いということを突き詰めてその闇を見せつけられると心がグッタリしてカロリー消費量もすごい。そしてホラー作品を観ると怖くて夜眠れなくなる。シャワーに入った時に後ろに誰かいるのではないか?と想像して怯えたりして、もし自分の身に起きたら……と劇中で起きていることを自分に置き換えて考えてしまうからだと思います。 ──想像力が豊かなのでしょうね! ただ『スイート・マイホーム』を通して、ホラーと一口に言っても様々な視点があるものだと学ぶことができました。『呪怨』の清水崇監督が手掛けた『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』(2009年)には参加したことがあるので、苦手克服という意味も込めてホラー作品を観るという自分の間口を広げたいと思います。俳優としてオファーがあればJホラー作品にも挑戦したいです!