『ハルヒ』『ヒロアカ』…音楽テーマじゃないアニメの文化祭ライブが話題になるワケ
『ヒロアカ』戦闘力なくても脚光を浴びるキャラ
次は『僕のヒーローアカデミア』の第86話「垂れ流せ!文化祭!」。ヒーロー科1年A組がバンド隊、ダンス隊、演出隊の3チームにわかれて文化祭のステージで『Hero too』を披露した。同曲は本作の劇中楽曲を手掛ける林ゆうきが作曲、スリーピースロックバンド・Dizzy Sunfistのギターボーカルを務めるあやぺたが作詞を担当している。また、作中ではアメリカのロックバンド・Against The Currentのボーカルを務めるChrissy Costanzaが歌っていた。 原作漫画ではライブシーンはあるが、どんな曲が披露されているのかまでは描かれていない。アニメではどのように表現されるのか注目されていたが、楽曲のカッコ良さもさることながら、英歌詞だったことには驚きを隠せない。ただ、英歌詞だからこそキャッチ―なメロディがより引き立ち、またCostanzaのクールな歌声も合わさり耳にスーッと入ってきた。 楽曲はもちろん、A組の生徒がダンスや演出で個性を使ってステージを彩っている映像も素晴らしい。私利私欲を満たすためでも、敵を倒すためでもなく、誰かを笑顔にするために個性を発揮している姿もとても眩しい。加えて、ベースボーカルを務める耳郎響香に文字通りスポットライトが当たるエピソードなのも良い。耳郎は戦闘能力が高くなく、これまであまり活躍が見られないキャラだった。『ヒロアカ』は従来のバトル作品とは異なり、戦闘能力のない登場人物でも脚光を浴びる姿を描いてくれる。そんな『ヒロアカ』だからこその魅力が詰まったシーンとも言える。
名もなきキャラが歌う青春パンク
『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』の11話「わたしにもみえるよ」も印象的。本作は2035年を舞台にした学園アニメ。主人公の天宮学美たちが通う聖桜学園と吸収合併することになった愛光学園の理事長・貴生川鏡子から学園祭の中止を通告される。一方的な鏡子の言い分に怒りや落胆を覚える学美たち。しかし、少子化の影響や価値観の多様化により、「高校に進学せずに働きに出るほうがカッコイイ」という風潮がそもそも根強く、「学園祭中止はやむなし」という空気が学内に流れる。それでも、学校に通うことの意味や楽しさを学美たちが生徒たちと分かち合い、空気を変えることに成功して無事に学園祭の開催にこぎつけた。 自分たちの力で勝ち取った学園祭だけあって、学園祭を開催すること自体に大きなストーリーが乗っかっている。だからこそ、そのステージで友達への感謝を歌った『桜舞うこの約束の地で』が演奏されたことは感慨深い。同曲は茅原実里が声優兼歌唱も担う“バンドリーダー”という名もなきキャラがギターボーカルを務めるバンドによって披露された、疾走感に溢れたゴリゴリのベースサウンドがたまらない青春パンクになっている。学美たちの軌跡を考え、照れてしまうくらいの真っすぐな歌詞が余計に胸に突き刺さった。 今後も音楽をテーマにしていないアニメの心に残る文化祭ライブが多く描かれることに期待したい。
望月 悠木