デアゴスティーニが高額なのに売れる理由…買いにくい商品を「買いやすい」に変えるたったひとつのコツ
デアゴスティーニの「買いやすい戦略」
ちなみに、多少脱線するが、『ドラゴンボール』というマンガは背表紙のイラストが1巻から順番につながっているデザインになっていて、本棚に並べると次の巻もそろえたくなる工夫がされていた。 その結果、私は42巻をすべて買ってしまった。これも上手に分けた事例と言える。 「分ける」ビジネスモデルで成功した代表格は、テレビCMでもおなじみの「デアゴスティーニ」だろう。 完成した模型や部品を一括で販売するのではなく、定期的に、少しずつ部品を販売して、徐々に組み立てていく楽しみを消費者に提供している。 「創刊号」を安い値段で売ることで、お客さんは「買いやすい」。買った人たちは、「最後までやりとげたい」という気持ちで、定期的に送られてくる部品を楽しみに待つわけだ。 ちなみに『週刊 ホンダCB750FOUR再刊行版』というバイクは総額15万円ほどになるそうだが、創刊号特別価格は490円、毎週の通常価格は1999円。 『週刊 陸上自衛隊 90式戦車をつくる』は総額22万円ほどで、創刊号特別価格は290円、通常価格は約2000円となっている。 15万円とか、22万円とか言われると、買う決断をするのに勇気がいるが、分割払いで、しかも買ってみてイマイチだと思ったら「解約オーケー」としておけば、買うほうは手を出しやすい。 「分割払い」というのは、ある種の魔物であるが、買ってもらうための上手な分け方でもある。 文/下地寛也 コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント エスケイブレイン代表1969年神戸市生まれ。1992年文房具・オフィス家具メーカーのコクヨに入社。5年後、コクヨがフリーアドレスを導入したことをきっかけに「働き方とオフィスのあり方」を提案する業務に従事し、ワークスタイルを調査、研究する面白さに取りつかれる。 顧客向け研修サービス、働き方改革コンサルティングサービスの企画など数多くのプロジェクトマネジメント業務に従事。未来の働き方を研究するワークスタイル研究所の所長などを経て、現在はコーポレートコミュニケーション室の室長としてコクヨグループのブランド戦略や組織風土改革の推進に取り組んでいる。 著書に『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社)、『プレゼンの語彙力』(KADOKAWA)、『一発OKが出る資料 簡単につくるコツ』(三笠書房)などがある。 写真/shutterstock