「休廃業・解散」が過去20年で最多、今後は倒産も増加に転じる恐れ
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、行政による資金繰り支援策の効果もあり、企業の倒産件数は低い水準にとどまっている。だが、代表者の高齢化や後継者不足、将来的な成長が厳しいことなどを背景に、休廃業・解散件数は大きく増加している。また、資金繰り支援策の多くは債務であることから、今後、過剰債務に苦しむ企業の倒産が増加する恐れもある。(東京商工リサーチ情報部 原田三寛) 【この記事の画像を見る】 ● 倒産が大幅減の一方で 休廃業・解散が最多を記録 「企業倒産、半世紀ぶり低水準に――」。 2020年6月1日、共同通信の配信記事が各ニュースサイトに掲載された。そこでは20年5月の倒産件数が300件台に落ち込み、半世紀ぶりの低水準になるとの観測を伝えていた。コロナ禍で倒産が大幅減少という想定外の変調は、全国の支社店から日々集まる情報に兆しが表れていた。
企業倒産の抑制はその後も続き、20年(1-12月)の企業倒産は7773件(前年比7.2%減)と過去50年間で4番目に低い水準にとどまった。 だが、その一方で、20年の「休廃業・解散」は4万9698件(同14.6%増)と、18年(4万6724件)を抜いて2000年の調査開始以降、最多を記録した。コロナ禍で企業倒産と休廃業・解散は、対照的な動きを見せた。 ● コロナ禍の倒産件数が 当初想定よりも減少した理由 新型コロナウイルス感染が国内で初めて確認された2020年初め、東京商工リサーチ(TSR)情報本部は、20年の企業倒産は1万件、休廃業・解散は5万件と想定した。結果は、休廃業・解散はほぼ想定通りだったが、企業倒産は1万件どころか、8000件を割り込んだ。 20年4月、全国に発令された緊急事態宣言は外出自粛、在宅勤務など、これまでの日常と異なる“新たな生活様式”を生んだ。倒産手続きを受理する裁判所は、審尋や面談などの一部業務を縮小した。倒産の9割以上を占める破産や民事再生などの法的手続が先送りされ、5月の企業倒産は314件(前年同月比54.8%減)と激減。1964年6月の295件に次ぐ、56年ぶりの記録的な低水準となった。 都内の法律事務所で代表を務める弁護士は、「破産という一大決心をリモートで進めることはできない」と経営者の気持ちをおもんぱかった。 さらに、セーフティーネット保証の適用拡大や持続化給付金、中小企業再生支援協議会を通じた「新型コロナ特例リスケ」の運用(4月1日~)なども開始された。