美の探究者 その感性と哲学(6) プロとは〝責任を取れる〟こと <久山奈津>
みなさんにとって、プロフェッショナルとはどういったものでしょうか? 仕事や職業で自分自身がプロであるという自覚を持ち、その職務に対する使命感や向上心を持つことなどと言われますが、つまりは自分がやったことに対して〝責任を取れる〟ことだと私は思います。 私はまつ毛パーマの技術指導者です。私の業界では技術者としてデビューするまでに一週間ほど研修を受けた後、すぐに現場に立ち、お客様に施術をしているケースが多いようです。初めてそれを聞いた時、私は本当に驚きました。私が運営するサロン「ル・キヤ」では、プロとしてお客様に施術させられる技術に到達するまで、最低でも3カ月~半年はかかるからです。 お客様には心地良く施術を受けてもらわなければなりません。例えば、多くのサロンでは技術者が施術しやすいように、まぶたにテープを貼りますが、ル・キヤはそれをしません。確かにテープを使えば施術はしやすくなるのですが、肌の弱い人はテープを貼った場所がすぐに赤くなったり、かぶれたりしてしまいます。もちろん、テープを使わないので相当な技術が求められますが、テープで引っ張らない分、自然な形の仕上がりになります。 また、ロットもテープで固定しないので、閉じたまぶたの中で動く眼球に合わせ、ロットも動かさなければならない。この感覚を身につけるのが難しいのです。 まつ毛一本一本を丁寧にカールし終えたとき、私にはプロとして譲れない部分があります。全体をチェックして一本でも下を向いてたり、バランスが悪いと感じれば、必ずやり直します。お客様が気づかないのにやり直す。それはプロとしての責任があるからです。 ここで紹介したのはほんの一部ですが、ル・キヤの場合はこうした技術を一週間で習得させ、サロンにデビューさせるのは到底、無理です。プロとしての〝責任を取れる〟とはこういうことです。 ル・キヤでは、こうしたプロ意識をスタッフに伝え続けています。だからこそ、お客様から「あなたじゃなきゃダメなの」と選ばれる人間になれるのです。 (ル・キヤ代表 久山奈津)