後閑信吾(バーテンダー)と“美ちゅらな風味”を求めて琉球ワンダー。「ハッピーモア市場トロピカル店」──特集:クルマとともに旅に出よう2024
旅の季節が今年もやってきた。クルマは、我々を見知らぬ土地へ誘う。かつての若きジェントルマンは旅を通し、見聞を広め、人生を豊かにしてきた。GQ JAPANはこの秋、千葉、丹波篠山、沖縄、北海道の新しい旅を提案する。クルマを相棒に、いざ、グランドツーリングへ。今回は沖縄・宜野湾の奇跡ともいえる「ハッピーモア市場トロピカル店」。 【写真を見る】それぞれのプライスとディテールをチェック!
地元密着型のファーマーズマーケット
「初めて食べました」と島バナナに感激する後閑に、中城村のフルーツ生産者もにっこり。「本土の人はこんなおいしい島バナナ食べたことないでしょ」 「『エルレキオ』を任せている杉浦が地元産の珍しい食材に出会えると奨めてくれたんですけどね。スーパーマーケットって少し落ち着かないな」と、少し困惑していたような後閑。たしかに世界を飛び回るバーテンダーが真っ昼間のスーパーにいるのはちょっと不思議な光景ではあった。 市場に出回るバナナの多くがまだ成熟しないうちに収穫され、流通の過程で追熟されるが、ここでは樹の上で完熟したバナナにも出会うことができる。ちなみに島バナナはフィリピンから沖縄に根付いたと言われ、小笠原種とも呼ばれているとか。 「お兄さん、コレ食べてってみてよ」と、人の指ほどのバナナを渡してくれたのは、この日試食イベントを開催していた沖縄県南東部にある中なかぐすくそん城村のフルーツ生産者。やや強引なノリに押されるようにして食べた後閑だったが……口にした途端に目が真ん丸に。皮がうすく、ねっとりした肉質で、さわやかな甘味。日頃食べ慣れているバナナとはまったく趣を異にする島バナナとの出会いだった。 ここ「ハッピーモア市場トロピカル店」は、トマト栽培に使っていたビニールハウスをどうにか活用できないかと始めた野菜直売所がきっかけ。近隣の小さな農家が家族のためにつくっているような野菜・フルーツを卸してもらい、農薬をほとんど使わずに育てられる作物が安心・安全だと少しずつ人気になり、規模を拡大していった。現在では2000超の農家と取引があるというが、そのどれもが生産者の顔が見える、いわば地域密着型のファーマーズマーケットなのであった。 さて、島バナナのおいしさに目覚めた後閑はその後も、オーダーしてから搾ってくれる薬草スムージーを飲んだり、沖縄各地産の黒糖売り場をチェックしたりとリサーチに余念なし。いつのまにか大きなカートを押しながら、旬のオクラやパイナップル、なぜか炊きたての発酵玄米まで買い込んでいたが、一体いつ食べるんだろう? バーテンダーという鎧を脱ぎ捨て、思いがけず本気でショッピングを楽しんでいる後閑に出会えた。 ■ハッピーモア市場トロピカル店 2021年に2号店としてオープンした「トロピカル店」には農家が毎日やってきて野菜やフルーツを直接出品。「ハッピーモア市場」オリジナルレモンアンダギーや新鮮なフルーツや野菜をたっぷり使用したスムージーも人気。 住:宜野湾市大山7-1350-81 ぎのわんゆいマルシェ内 TEL:098-988-9785 営:10:00~18:00 休:年末年始 https://happymore.jp ■後閑信吾(ごかん・しんご) 1983年生まれ、神奈川県出身。2006年に渡米、NY のバーで活躍し、国際コンペティションでの優勝も経験したのち、上海でバーを開店。現在、東京で「The SG Club「」ゑすじ郎「」æ「」The SG Tavern」、那覇で「El Lequio」を運営するほか、NY、香港、マドリードでバーを展開。好きな言葉は「士魂商才」。
写真・福田喜一 文・秋山都 イラスト・尾黒ケンジ 編集・岩田桂視(GQ)