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アメリカの美術館、館内での人種差別解消など訴える声相次ぐ

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美術手帖

 アメリカの黒人ジョージ・フロイドの殺害事件に端を発した抗議活動に対し、アメリカの美術館は相次ぎ声明文を発表して連帯の意思を表明してきた 。しかしこれらの美術館も、制度的な人種差別をめぐる批判の新たな標的となっている。  グッゲンハイム美術館の職員は6月22日、同館の管理層にレターを送り、職場における多様性や平等の強化を要求。ニューヨーク・タイムズ によれば、「学芸部門」と署名されたこのレターでは、同館の職場環境を「人種差別、白人至上主義、および他の差別的慣行を容認する不公平な労働環境だ」と訴えている。  報復を恐れて名前を明らかにしなかったこれらの職員は、「改革が緊急に必要とされている」同館に対し、「えこひいき、沈黙、報復の文化を終わらせる」ことを要求。また、採用慣行を見直し、有色人種キュレーターの採用を保証することや、「おもに白人男性の展覧会の歴史とコレクションの慣習を正す」ことも求めている。  また職員たちは、2019年に同館で開催された「Basquiat’s “Defacement”: The Untold Story」展で、ゲスト・キュレーターを務めたチェードリア・ラブビエの扱い について、独立した調査を行うことも要求。ラブビエはグッゲンハイム美術館史上、単独で展覧会を取りまとめた初の黒人キュレーター。しかし、閉幕間近に開催された本展のパネルディスカッションから、ラブビエは排除された。  同館館長のリチャード・アームストロングはこのレターに対し、次のように語っている。「私たちのキュレーターはグッゲンハイムに不可欠で、私たちは彼らの声を聞いている。変化を起こそうとする彼らの努力は、私たちがより多様かつ公平で、すべての人を歓迎する組織になるための有益な対話の機会となる」。  またラブビエの告発を受けた、グッゲンハイム美術館の主任キュレーター兼アーティスティック・ディレクターのナンシー・スペクターは、7月1日より3ヶ月間の長期休暇をとることも明らかにされた。しかし、この決定とレターとの関係性はまだ不明だ。  いっぽう、サンフランシスコ近代美術館の現職員と元職員も管理層にオープンレターを送付し、同館における組織的な不平等を批判している。  「ARTnews」によれば、同館コミュニケーション部門の黒人職員であるテイラー・ブランドンは、「Black Lives Matter」を支持する美術館のInstagram投稿に対し、「自らの経済的利益のために黒人の痛みを利用する」とコメント。しかしこのコメントは、美術館によってすぐに削除されたという。  同館職員はレターにおいて、管理職層は「人種差別に反対する未来に向かって、組織を導く知識、技術、人間性を欠いている」としながら、従業員のストライキやアーティストのボイコットも呼びかけている。  同館の館長であるニール・ベネズラは、このレターに対して謝罪声明を発表。「コメントを制限するという決定は、美術館としての私たちの価値観と一致しなかった。私は美術館の行動に対して全責任を負う」としている。  またメトロポリタン美術館も、美術館内での制度的な人種差別をめぐる批判の渦中に巻き込まれている。  同館のヨーロッパ絵画部門長であるキース・クリスチャンセンは、奴隷身分であった人々の解放を祝う「ジューンティーンス」である6月19日に、フランス革命から歴史的な記念碑を救出した考古学者アレクサンドル・ルノワールの画像を個人のInstagramに投稿。この投稿のコメントでクリスチャンセンは、アメリカで広がっている 人種差別的な記念碑が撤去されたことを「革命的な狂信者」の行動と比較している。  クリスチャンセンの投稿は激しい非難を受け、結果、メトロポリタン美術館の館長マックス・ホルラインはニューヨーク・タイムズ に対し、「メトロポリタン美術館の発展は、白人至上主義とも関連していることは間違いない」と謝罪しつつ、「コレクションの多様化だけでなく、プログラム、ナラティヴ、コンテクスト、スタッフの多様化に向けた当館の継続的な取り組みはさらに加速される」としている。

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