野口聡一さんISSに到着、そして「アルテミス合意」の意味
日本の立ち位置はどうあるべきか、アメリカと歩調を合わせるのが現実的と言わざるを得ないなかで、貢献できることは何か? いま、先んじて行われているのは以前、小欄でもお伝えしたデブリ=宇宙ゴミの対策です。JAXAが行っているデブリの観測の他、民間企業と共同で開発している導電性テザーを使った「宇宙デブリ拡散防止装置」など、宇宙ゴミの後始末の技術を磨いています。 そして、もう1つは月面探査車です。トヨタ自動車とJAXAが共同開発しているもので、「ルナ・クルーザー」と名付けられました。 全長6000mm、全幅5200mm、全高3800mm、マイクロバス約2台分のサイズに2名が滞在でき、内部は4畳半のワンルームより少し小さいぐらいの大きさを想定しています。動力にはトヨタの“お家芸”燃料電池を搭載し、1万kmの月面走行を目指します。 地球の6分の1の重力、250℃以上の寒暖差、宇宙放射線の影響などにどう対応するか、課題は少なくありません。 一方、JAXAの担当者はアルテミス計画への貢献次第としながら、「計画に参加するからには日本人を月面に下ろしたい。なるべく早く、アメリカ人以外で日本が最初になりたい」と話します。
時期としては2020年代後半。それを見越して、JAXAは来年(2021年)秋をめどに、新たな宇宙飛行士を募集することを発表しました。 宇宙飛行士の若田光一さんは10月23日の記者会見で、「月探査を目指した宇宙飛行士を募集する」と明言。「地球低軌道から月探査に向けて、日本の有人宇宙活動が広がって行くなかで、新しいステップ、夜明けだと思っている」と語りました。 また、選抜や訓練にあたり、新たな試みとして民間企業との連携強化を挙げました。 「自動車・航空など幅広い分野から、オペレータなど専門性のある技術者を育成・訓練している企業がたくさんあると思う」と期待を示す若田さん。月面探査車を開発しているトヨタの関係者を視野に入れているようにも感じます。 宇宙開発と安全保障は、もはや切っても切れない関係になりつつあります。科学者の純粋な思いだけでは成就できない、各国の思惑が交錯するのは否めないところですが、平和利用の理念を堅持しながら、なくてはならない技術で存在感を出す……現状、それが日本という国に与えられたミッションではないかと思います。 (了)