【#佐藤優のシン世界地図探索80】イスラエル・ヒズボラ戦争が「第三次世界大戦」になる危機
――イスラエルの諜報網ですね。 佐藤 そういうことでしょう。ただ、イランが意思を変えないと言えるのか。ここには確証を持てません。イランがレバノンに地上軍を派遣すれば、情勢が一変してしまいます。 ――イランからすれば、自分の舎弟の武装勢力、つまりイスラエルから見るとテロリストたちが総舐めにされています。 佐藤 現状ではイランは、それを全て見捨てているわけですね。 ――そういえばヒズボラは、必殺兵器である射程500kmのミサイルをテルアビブに撃ち込みましたね。 佐藤 ただアンチミサイルシステムで落としているので、被害はほぼありません。ヒズボラは、イスラエルが迎撃で打ち落とせるくらいの数を撃ってきているということです。 ――ヒズボラがどこかで全面戦争はやりたくない、という証ですか? 佐藤 それはあると思います。全面戦争になると、本当に皆殺しになりますから。 ――イランが出て来る前にヒズボラは「やるやる」と言っていますが、スーッと引いていくことはありますか? 佐藤 そのシナリオはあり得ます。しかし、イスラエルがこの機会にヒズボラの壊滅戦に踏み込んだので、もはや戦争の拡大を避けることはできません。 ――イスラエル軍はいま、レバノンへ地上侵攻しました。 佐藤 空爆でやれるところまでやったので、地上戦に踏み込んだということなのでしょう。 ――イスラエル軍地上部隊は、ガザ紛争で疲れ切っています。 佐藤 ただし、イランが地上軍を派遣しない限り、ハマスとヒズボラの二正面作戦で勝利することが可能と考えているのでしょう。 ――シリア、イラクの反イスラエル武装組織が、相次いで「自分たちの兵士を送る」と言ってます。すると、ヒズボラは南下しますね。 佐藤 しますね。一緒に入って来ます。そこにシリア軍も入れば、イスラエル軍は兵力が足りなくなります。 ――ネットに公開された数字ですが、イスラエル軍は陸軍現役が16万9500人、陸軍の予備役が40万人。総兵力約67万人。 現在、ガザ地区の戦闘で、予備役36万人を招集しています。報道だとガザに4万人の兵力を投入しています。 ガザのハマスはいまでも1万5000人の構成員がいて、戦闘は続いています。ヒズボラは、トップのハメネイ師が総兵力10万人を投入。そこに、援軍の数万人が加わって10数万人がイスラエル北部に侵入してくる。 佐藤 だから、イスラエルは無理なんですよ。ガザのハマス民兵とヒズボラではレベルが違います。なので、イスラエル軍はボロ負けです。そうなると米軍が介入します。 ――米軍は空爆はしませんか?