【#佐藤優のシン世界地図探索80】イスラエル・ヒズボラ戦争が「第三次世界大戦」になる危機
佐藤 しかし、そうした情報をどうして知っているかというと、やはりヒューミント(人的情報収集)ですよね。 ――モサド、アマン、すごいですね。これまで持っていたこの切り札を、いま使った。 佐藤 その通りです。最後のカードを切って、ヒズボラを本当に皆殺しにしようとしているわけです。 ――イスラエルはヒズボラを殲滅するまで、攻撃はやめないですね。 佐藤 そう思います。同時に、イスラエルはイランは出て来ないと読んでいます。 ――そ、それは! イランの大統領が穏健派に変わったからですか? 佐藤 イスラエルは、その根拠となる情報を持っているのだと思います。 ――それって、最大に危険な賭けではないですか? 佐藤 もしイランが出て来るということだったら、できないゲームです。イランが出て来ないのは、イスラエルの強がりなのか、根拠があるのか、分かりません。しかし、イスラエルはイランが出て来ないと読んで、この作戦を実行したはずです。 ――すさまじい決断です。 佐藤 もしイランが出て来たら、第三次世界大戦ですからね。 ――すると、佐藤さんがかねてから言っていた「ガラスの均衡」(参考:【#佐藤優のシン世界地図探索69】イスラエルはいま建国以来の危機)が......。 佐藤 その均衡が崩れましたね。 ――その割った中から、もうひとつの小さな「ガラスの均衡」が出て来たとは考えられませんか? 佐藤 均衡になっているかはわかりませんが、少なくともイランが地上戦に踏み切っていない現状を見ると、イスラエルの予測が正しかったと、いまの段階ではそう言えますね。 イスラエルは、イランの核開発施設がどこにあるかを正確に把握している。そして、それを破壊する能力を持っている。そのことを複数のチャネルを通じてイラン指導部に伝えていると私は見ています。イランは、核開発能力とヒズボラのどちらを守るかという選択を迫られている。イスラエルはイランが核開発能力を選ぶと見ている。 しかし、僕が一番心配なのは、イランがヒズボラを見捨てるという意思決定が100%確実なのかということです。それが僕には分かりません。だけど、その確証をイスラエルはどこかで掴んだのでしょうね。 ――米国が教えた可能性は? 佐藤 米国のインテリジェンス能力はそこまで高くないと思います。