トイレットペーパーの品切れはなぜ起きた? 社会心理学の専門家に聞く
パニックに陥った人の心理状況とは?
関谷氏は「多くの人々が新型コロナウイルスの問題について関心を持ち、情報に敏感になっている中で、紙製品の買い占めについての報道が過熱したため。SNSの流言(りゅうげん)ではなく、メディアの過剰報道が原因」と分析します。
紙製品が店頭から姿を消し始めて以降、メディアやSNSでも「落ちついた行動を」「紙製品が足りないというのはデマ」などと、事態を沈静化させるための情報発信がなされました。なのに、さほど改善が見られないのはなぜなのでしょうか。 買い占めに走った人について、関谷氏は「一人ひとりは、自分がパニックに陥ったとは考えていない。だから『落ち着いて下さい』といわれても、自分は落ち着いているので関係がないと思うし、『足りないのはデマ』と言われても、目の前の店舗にはないじゃないか、と反発する」と人の心理を説明します。 その上で、「自分はただ紙製品が欲しいから、あるいは家にないから買うのであって、あわてて買いだめをしているわけではない、と考える。その少しずつの集積が、全体としては通常よりも異様な消費行動に結びついている」とします。
パニックを沈静化するには
今回のような買い占めを沈静化させるためにはどのような方法が取り得るのでしょうか。 関谷氏は「事故で電車がストップした際、鉄道会社はよく車内放送で、どこそこでどんな事故が発生して、運転再開は何時何分ごろを予定する、など状況を細かく伝えている。同じように、『今は店頭にないが、配送センターには製品が届いているので、何日には店頭に安定供給される』と具体的な状況と供給時期の目安を伝えることが必要ではないか」と提案しています。 (取材・文:具志堅浩二)