『ブレインストーム』困難を乗り越え作り上げたダグラス・トランブル監督作(後編)
今回も、ダグラス・トランブルが監督した2本の長編劇映画の内、『ブレインストーム』(83)について述べる。なかなか離陸できなかった企画だが、ようやくクランクインまで漕ぎつけた。しかし本当の困難はこの後に待っていた。
あらすじ3 ブレインストーム計画
研究室に入ることを禁じられたマイケル(クリストファー・ウォーケン)は、引退したハル(ジョー・ドーシー)に相談に行く。ハルは一言「ブレインストームを調べろ」とだけ教えた。マイケルがネット(*1)で自宅からハッキングを試みると、「ブレインストーム」とは最高機密計画の名称だと判明する。この時点で軍側は、マイケルが侵入しようとしていることに気付いていたが、あえて泳がせていた。 マイケルがリアリティレコーダーに接続すると、マークス博士(ドナルド・ホットン)が登場し「関係者はこの先を再生してはならない。激しいトラウマを招き、危険だからだ」と警告を出す。すると拷問されている人物の恐怖体験がマイケルを襲い、彼はあわててデバイスを投げ捨てる。 マイケルはカレン(ナタリー・ウッド)に、「俺たちはアレックス(クリフ・ロバートソン)に騙されていた。彼は技術を軍に売り渡し、洗脳に使おうとしている」と話す。その隙に息子のクリス(ジェイソン・ライヴリー)が、まだネットに接続されたままのデバイスを興味本位で装着してしまった。そして長時間の拷問を体験し、ショックで気を失ってしまう。 クリスを入院させたマイケルとカレンの所に、アレックスがやってくる。マイケルは「ブレインストーム計画」のことを問いただすが、逆にゴーディ(ジョーダン・クリストファー)の死を知らせ、リリアン(ルイース・フレッチャー)の死の過程を記録した「デステープ」へのアクセスを禁じる。 マイケルは、常に軍から監視されるようになってしまった。そこでカレンと喧嘩別れしたフリをする。そして盗聴されている電話で、無関係な話しをしながら、ホテルから研究室のセキュリティシステムを破壊し、リアリティレコーダーを遠隔操作する。一方カレンもハルの協力を得て、研究室のデータや、軍用リアリティレコーダーの生産ラインの物理的破壊を実行する。 マイケルは軍から逃れるため、カレンとの思い出の場所であるライト兄弟国立記念碑に移動し、公衆電話からリアリティレコーダーに接続し、デステープの続きを再生した。カレンもここに到着し、恍惚とした表情でトリップしているマイケルを抱き締める。マイケルはリリアンの死を追体験し、彼女が天に召されたことを確かめる。 *1 この時代にはまだインターネットはなかったが、前身であるARPANET(https://ja.wikipedia.org/wiki/ARPANET)が稼働しており、主にアメリカの大学、軍施設、研究所などに普及していた。ただし、光回線などはまだなかったため、劇中では電話回線と音響カプラ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%B3%E9%9F%BF%E3%82%AB%E3%83%97%E3%83%A9)を用いて通信していた。