<映画評>世界中の空の魅力が詰まった作品 ディズニー最新作 『プレーンズ』
80年代の名作『トップガン』を彷彿とさせるド派手な飛行シーンから始まる同作品。BGMや航空機が“響かせる”すべての音は、アニメーションを超越したリアリティがある。祖父、そして父が海軍パイロットだったという家庭に育ったクレイ・ホール監督。幼いころから大空に魅せられてきたからこそ、描くことができる世界観を鮮やかに表現している。 ディズニー最新作 「プレーンズ」プロデューサーに聞く
冒頭の『トップガン』をオマージュしたシーンで観客を引き込み、『紅の豚』をはじめとする宮崎アニメの飛行シーンを要所々々にちりばめ、戦闘シーンでは、ゼロ戦映画などからも影響を受けるなど、初めて観るにも関わらず、どこか懐かしさも共存している。 水難シーンでは、『パーフェクトストーム』や『海猿』。ヒマラヤの山岳地帯の風景は『バッドマン・ビギンズ』か、と思わせたが、種明かしをプロデューサーのトレイシー・バルサザール=フリン氏にたずねると「パーフェクトストームはおもしろい意見ね」と一蹴(笑い)。飛行シーンのある作品、映像からは、映画に限らず参考にしているが、それ以外は、意識してなかったという。おそらく、『トップガン』を思わせるオマージュが、あまりにも強烈な印象を与え、見る側にそういった期待をもたせてくれたのかもしれない。 レースは、アメリカをスタートし、アイスランド、ドイツ、インド、ネパール、中国、そしてメキシコを経てアメリカへと戻る。それぞれの国の景勝地が描写されており、繊細に再現されたスクリーンの中にあるインド・タージマハルは、この作品の中でも見どころの1つだ。ここでは、スピード感あふれるシーンが続く他のエリアとは対照的に、静かに緩やかに時間が流れている。 出演しているキャラクターも個性豊かで、日本女性の「奥ゆかしさ」を備えたサクラ、陽気なメキシカン、エル・チュパカブラなど、さまざま。ちなみに、「チュパカブラ」は南米に生息すると言われている吸血獣の名前。メキシコ出身のレース機がこの名前を名乗る理由は、「覆面レスラーのリングネームで、エル・チュパカブラは、強さ、怖さをイメージさせるから」(前述プロデューサー)。しかし、怖さというよりは、強く優しく描かれている。 ストーリーは、田舎町の農薬散布機が世界一周レースへの出場を夢見て努力を重ね、仲間に支えられ、成長していくアメリカ映画らしい作品。飛行レースならではの、スピード感は圧巻で、手に汗握る場面も。