周囲と「違うモノ」を選びたい気持ち ジャガーXF 250PSでラストラン(2) 孤立を恐れない知的な雰囲気
周囲とは違うものを選びたいという気持ち
フロントに載るのは、軽い4気筒エンジン。バッテリーEVだけでなく、内燃エンジンのSUVでも達成が難しい、まとまりとバランスの良さを獲得している。純粋な運転の楽しさを味わえる。 とはいえ、時代は違う方向へ流れている。いまスポーティなサルーンに乗ることは、同調圧力へ抵抗するという気持ちも、多少は含まれているように思う。 そんな考えを持つ人物として、テレビドラマ「主任警部モース」に登場する、モース警部の現場を尋ねてみよう。この役を演じたのは、ジョン・ソウ氏。初放映は1987年だったが、彼は1959年に発売されたジャガーMkIIを運転していた。 30年後、テムズ・バレー・エリアを舞台にしたドラマの主役が乗る愛車として、XFは登場するだろうか。クーペのFタイプなら可能性はある。2050年に、主任警部モースの復活を検討する企画陣が、フォルクスワーゲン・ティグアンを選ぶとは考えにくい。 ジャガーのオーナーには、周囲とは違うものを選びたいという気持ちがあるように思う。少しの気難しさや、妥協を許さないような気質も。それは、ジャガーというクルマにも表れているだろう。 この記事を通じて、犯罪者や偏屈な人物が乗るようなクルマだと伝えたいわけではない。誤解しないで欲しい。特にXFは、ジャガーが訴求力の高いサルーンを切望していた時期に生み出された、素晴らしいモデルだ。 BMW 5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスと比較され、高く評価されてきた。ジャガーの歴史に、XFは刻まれることだろう。
優雅で大胆 孤立を恐れない知的な雰囲気
ライバルほどのデジタル技術は備わらず、多様なバリエーション展開はされなかったかもしれない。それでも完成度は高く、スポーティなRは、圧倒的な動的能力でクラスをリードする水準にあった。 端正なスタイリングは、多くのデザイン賞も勝ち取った。JDパワーによる市場調査では、顧客満足度トップに輝いたこともある。 ジャガーは、「速く、美しいクルマ」というキャッチコピーを掲げていた時期があったが、XFはまさしくそんなモデルだった。XKやFタイプと同様に。 XFはブランドを救えなかったとしても、SUVのFペイスを生み出し、新しいXJを生み出すための基盤を作った。ひと回り小さいXEを導き、ステーションワゴンのスポーツブレイクも際立つ存在になった。 ジャガーのサルーンは優雅で大胆で、周囲に流されない選択肢になってきた。孤立を恐れない、知的な雰囲気を放ってきた。次の時代のジャガーにも、これらの特徴は受け継がれるはずだ。
ジャガーXF インジニウム2.0 250PS(英国仕様)のスペック
英国価格:4万1265ポンド(約825万円) 全長:4962mm 全幅:1890mm 全高:1456mm 最高速度:249km/h 0-100km/h加速:6.5秒 燃費:12.3km/L CO2排出量:186g/km 車両重量:1735kg パワートレイン:直列4気筒1998cc ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:250ps/5500rpm 最大トルク:37.1kg-m/1300-4500rpm ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)
マット・プライヤー(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)