くじ運に恵まれたと思いきや…スペインが直面した“コソボ問題”
文 木村浩嗣 去る12月7日、2022年カタールW杯欧州予選の組み合わせが発表され、グループBのスペインはギリシャ、スウェーデン、ジョージア、コソボと同組になった。またもやくじ運に恵まれたわけだが、スポーツ面以外の部分でこの組み合わせが話題を呼んでいる。
認めるわけにはいかない
というのも、スペインはコソボを国家として認めていないのだ。両国には外交関係が存在せず、互いに大使館も置いていない。ちなみに日本はコソボを承認済みで、東京に同国大使館がある。 なぜ、スペインは承認を拒否しているのか? それは以下のような事情だ。 2008年2月、セルビアの一地域だったコソボは、前年の選挙で独立派が政権党になったことで独立を宣言した。ただちにアメリカ、イギリス、フランスなどが承認したのだが、スペインは今も認めていない。というのも、コソボを国家として認めてしまえば、理屈上カタルーニャの独立も認めなければならないからだ。 カタルーニャで独立派が政権党になることは、選挙という民主的な手続きを経てのことだから避けられない。だが、彼らが独立の是非を問う住民投票を実施することは、独立の権限はスペインの一地方であるカタルーニャが独占的に保有しているわけではない、という理由で拒否している。話し合いでスペインが認めた時のみカタルーニャの独立が可能だ、というのが中央政府の立場だ。
そもそも組分けが間違いか
FIFAの規定によれば、開催地はホームチーム側が決められることになっている。コソボは首都プリシュティナにスペインを迎えることを明らかにしているが、スペインは開催地を中立国に変更することができる。 中立地で試合を開催するか、それとも「政治とスポーツは別」と、通常通りスペイン国内で開催するかは3月の予選スタートまでに決められることになる。 そもそも、組分けの時点で間違っていた、という指摘もある。スペインだけでなく、同組のギリシャもコソボを承認していないのだ。 W杯予選の組み合わせは純粋なくじで決まるのではない。外交的トラブルを避けるため、国際的な紛争のあったセルビアvsコソボ、スペインvsジブラルタル(スペイン内にあるイギリスの海外領土)などのカードを避けるよう、各国のサッカー連盟はFIFAに事前に要請できるのだ。 実際、くじの結果ではコソボはグループAに振り分けられたのだが、AにはセルビアがいたのでBへ送られた経緯がある。スペイン連盟(またはギリシャ連盟)がコソボを“同組禁止国”にしていれば、余計なトラブルは避けられたはずなのだ。 いずれにせよ、独立派が政権を握り続けるカタルーニャの現状を考えると、今回のことがコソボの国家としての承認に向けての第一歩になるとは思えない。