近所の子供もふらっと中庭に?地域のコミュニティ、親世帯との距離感など、ローカルで適度な繋がりとプライバシーを両立した家
敷地には周囲環境や歴史、近隣住人とのコミュニティなどが必ず存在します。CASA ERIはそれらを丁寧に読み解くことで、周囲とつながりつつ、家族間まで程よい距離感の住まいを叶えています。 【写真で見る】グリーンの壁やグラフィカルな戸も魅力的!建築家が叶えた、愛着たっぷりに暮らせる家
周辺環境とのつながり
緑豊かな公園に面したグレーの建物。公園側に大きな窓はなく、回り込むと2つの建物に囲まれた中庭が広がっていました。 テラスには訪れた人を招き入れるかのように沓脱石(くつぬぎいし)が据えられ、室内に入るとグリーンの華やかな空間に思わず声が上がります。
研究者のご主人と共につくることを提案
「子供たちも玄関からではなく、このテラスから入るんです。近所の子供が中庭に自然に入ってきて、くつろいでいる姿には驚かされました」と楽しそうに話すのはMさん夫妻。 埼玉県にある実家の敷地の一角に家を建てることになり、建築家の山村健さんとナタリア サンツ・ラヴィーニャさんに相談しました。 ご主人は地震エネルギーを吸収して建物の揺れを抑える制振ダンパーの研究者で、山村さんとは大学の助手時代の同僚でした。 研究者で設計の実務経験はないものの、山村さんから「せっかくの機会なので一緒につくっていきませんか?」と提案。構造に制振ダンパーを導入することになりました。
都会にはなくなったコミュニティが今もなお生きる
敷地には築32年の母屋が立ち、初めて敷地を訪れた際のことを山村さんは次のように語ります。 「近所の家々にも案内してもらったのですが、正面玄関からではなく、『サザエさん』のように庭から入って行くんです。都市には見られないコミュニティが根付いていることに驚かされました」
つながりとプライバシー。両方をバランスよく
母屋や周囲環境とのつながりに配慮すると同時に、家族のプライバシーも大切にしたい。母屋の住環境を損なわず、周囲との適度な距離感を保つにはどうしたらいいか――。 そこで、L字の建物を敷地の東南角に寄せて配置。2階はシンプルに和室のみとし、祖母が使う和室への日当たりを考慮して、太陽の高度が低い冬場でも日差しが入るように2階を南側に寄せ、建物全体のボリュームを検討しました。