「実家の母が固定資産税を滞納しています…」金銭的な余裕がなく支払いができなかったらその末路はどうなるのか【弁護士が解説】
土地や家屋の所有者が納付することとなる固定資産税。もし、何らかの事情で滞納し続けた場合、どうなるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】 現在、実家には母がひとりで住んでいますが、固定資産税を2回分滞納しているそうです。私も金銭的な余裕がないので立て替えることができません。 家は一戸建てで、土地も建物も母の名義です。このまま固定資産税を滞納し続けるとどうなってしまうのでしょうか。(島根県・50才・アルバイト) 【回答】 固定資産税は、土地や建物などの所有者に対し、その所在する市町村が課税する税金です。 固定資産税は毎年4、5月頃に納税通知書が送られ、税額と4回に分けて納める期日(納期限)が通知されます。納期限を過ぎると延滞金がかかります。 延滞金は納期限から1か月の間は年2.4%の割合ですが、それ以後は年8.7%の高率になります(市場の貸出金利の水準に合わせて変わります)。 支払いを怠っていると督促状が郵送されてきます。それでも納税できない場合、納税者に資産がありながら納税しないのであれば、公平の観点からも放置できないので役所は滞納処分をすることになります。 お母さんの場合、実家の住まいを所有しているのですから、支払い原資になりうる財産を持っていることになります。そこで役所は、実家の土地と建物を差し押さえすることになります。
具体的には登記簿に滞納処分で差し押さえたとの記録が記載されます。差押え登記のある不動産は、その解除をしないと事実上、売却等ができなくなります。 滞納処分では、差押えに引き続いて公売がされます。公売とは役所が行う競売です。最高価額で入札した人に売られることになります。そしてその代金を滞納した税金に充てるという仕組みです。 しかし、不動産が銀行融資の担保になって抵当権登記が差押えの前に設定されていれば、役所の差押えは後回しになります。 借入残高が多額で、公売しても税金の回収ができない場合は、積極的に公売せず銀行融資の返済が進むのを待つこともあります。その場合でも給与をもらっていないかや預金がないかなどの調査をして、財産が見つかれば差し押さえ、預金などを取り立てて税金を回収します。つまり、納税の滞りを放置しておくと高率の延滞金がかかり、最後には財産を失うことになってしまいます。 こうした状態を避けるために、いまの支払い困難の原因が病気や失業などの一時的なものであれば、役所に徴収猶予を申請することをおすすめします。 将来の支払いも困難であれば、実家を売却し、税金を支払った残金を次の住まいに充てる方法もあります。現状を整理し、お母さんと相談してみてはいかがですか。 【プロフィール】 竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。 ※女性セブン2024年12月19日号