高齢者に自ら席を譲る親or子供に譲らせる親、どっちが教育的?―観察学習
観察学習 小学校4年生を例に解説
■ 観察学習(モデリング・社会的学習理論)とは モデルの行動の観察を通して新しい行動様式を学習する方法。考案者バンデューラは「われわれはたんに他者の真似をするだけではなく、他者の行動からありのままを学びとる存在」と述べている。
子どもは先生の「すべて」を見て学ぶ
小学校低学年の子どもにとって先生は優しいスーパーマンです。困っていると助けてくれて、一緒に遊んでくれる。それでよかったのです。でも、4年生にもなると、子どもたちは「もう子どもではない」と感じさせてくることが増えてきます。なぜなら、先生を客観的に見るようになるからです。 たとえば、自分たちに対して公平かつ平等な扱いをしてくれているか、といった先生の振る舞い方を見るようになります。少しずつ人物評価の目が養われてきた証拠です。次第に優しいだけでなく時には厳しく接してくれる先生、勉強をわかりやすく教えてくれる先生を高く評価するようになります。中学生や高校生も、教え方が上手い、自分たちの声に耳を傾けてくれる先生が理想でしょう。子どもや保護者から、どのような先生であってほしいと思われているか、それを意識しておくことは大切です。 教員を目指す人の中に、「自分が習った先生のような人になりたい」と言う方がかなりいるのは、 先生を通して「観察学習」しているからです。先生の存在は大きく、子どもたちにとって最高のモデルになり得るのです。モデルとして望ましい行動をすることに加え、子どもたちが行動を模倣したい、モデルにしたいと思うような憧れの存在でありたいものですね。
高齢者に自ら席を譲る親V S .子どもに譲らせる親 あなたならどっち?
混雑した電車に高齢の女性が乗ってきて、座っている家族連れの前に立ちました。すると父親らしき人が男の子に向かって「席を譲ってあげなさい」と言いました。男の子はしぶしぶ立ちあがり、そこにその女性が座りました。席を譲るという道徳的な行動の学習として、父親のやり方はふさわしいものだったでしょうか? あなたが父親であったら、どうしますか? 私だったら自分が立って「どうぞ」と席を譲ると思います。誰かに言われたから席を譲るのでは、この先も男の子は言われなければやらないかもしれません。でも、座っていたいはずの父親が自分の席を譲り、「ありがとうございます」と言われて笑顔を見せている様子を観察すれば、「次は僕もやってみよう」、になるのではないでしょうか。道徳的な行為を行っている父親をモデルとし、その行動を模倣する。観察学習のほうが道徳性の獲得という点で望ましいと考えられます。