ウクライナ防衛線〝崩壊危機〟に英メディア「戦略的な大惨事」 バイデン政権の兵器供与、トランプ氏大統領就任までの時間稼ぎか
バイデン大統領とすれば、来年1月のトランプ大統領就任式までに、ウクライナの戦線が崩壊したり、敗北が決定的になる事態は絶対に避けたい。そうなったら、「これまでの支援は十分だったのか」という声が噴出するのは避けられず、バイデン政権の失敗になるからだ。
逆に、就任式を過ぎてしまえば、その後、ウクライナがどうなろうと、責任はトランプ政権に転嫁できる。渋っていた長距離ミサイルなどの供与に踏み切ったのも、「自分自身の政治的思惑からだ」とみられている。
■石破政権これでは米新政権に「はしご外される」
ウクライナがロシアに奪われた東部4州やクリミア半島を奪回するのは、もはや幻になりつつある。
トランプ氏は停戦を模索している。報道によれば、現在の最前線周辺に非武装地帯(DMZ)を設け、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟は当分、棚上げする案が軸になりそうだ。プーチン氏は経済制裁の解除も求めている。
日本をはじめG7(先進7カ国)は26日、イタリアで外相会議を開いて、ウクライナ情勢を討議した。日本の岩屋毅外相はウクライナ支援の強化と厳しい対ロ制裁に取り組む姿勢を表明した。
相変わらず「バイデン路線べったり」で、トランプ次期政権の方向とは異なる。これでは来年1月以降、新政権に「はしごを外される」のは確実だろう。
そもそも、トランプ氏がウクライナ支援に消極的な理由の1つは、限りある国の資源を「中国の脅威」に振り向けるためだ。それは、日本の国益にもかなう。
石破政権と外務省は、トランプ政権の発足を前に、日本の国益を最優先に据えた戦略的判断をしているのか。大いに疑問だ。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。