「川崎フロンターレ」スーパーカップ勝利に見る「最短距離を忘れるな」の鉄則
■2月20日/FUJI XEROX SUPER CUP 2021 川崎フロンターレ―ガンバ大阪(埼玉) 【動画】川崎フロンターレ対ガンバ大阪戦は劇的な小林悠のゴールで決着 シーズン到来を告げるゼロックス・スーパーカップは、90+6分の劇的なゴールで川崎フロンターレに凱歌が上がった。 3対2というスコアと終了間際のゴール、そしてキーパーのスローから始まるゴールまでの流れから、ロシア・ワールドカップのベルギー戦の、あの痛恨の決勝点を思い出したファンも多かったかもしれない。 GKチョン・ソンリョンから谷口彰悟、田中碧、遠野大弥とつなぎ、最後に小林悠が仕上げたゴール。それは、サッカーのひとつのエッセンスを再認識させるものだった。 「ゴールへの最短距離を忘れるな」ということだ。 私がたまに出かける南米では、サッカーは騙し合い、目の前の敵の背後を取ってなんぼという思考が強い。 敵の背後を取っていき、最後にキーパーの背後にボールを置いたら勝ち。だから、目の前の敵を抜き去るプレーには価値があり、ドリブルでもパスでも、それをひとりで可能にするプレイヤーが重宝される。かつてはマラドーナやロナウジーニョ、いまならメッシやネイマールが、そうしたプレーを見せてくれる。 ゼロックスの決勝点で価値ある一手を打ったのは田中。球足の長い縦パスで一度に多くの敵の背後を取り、「あとは詰むだけ」というチャンスをお膳立てした。 田中に三笘薫、それに家長昭博と、川崎には多彩な形で背後を取れる選手がそろっている。それがこのチームの大きな強みだろう。
■前半の2ゴールも“自責”に近い
さて、決められたガンバ大阪にとっては、2点差を追いついただけに悔いの残る失点となった。 このゴール自体も決めた川崎が上手かったというより、決められた彼らのミスということもできる。先に触れたようにサッカーはゴールに直結する縦のルートがもっとも危険。そこへの警戒をおろそかにしていたからだ。 中盤のバランスが悪く、パスカットできず、受け手の遠野に反転を許し、気がつけば手遅れに。これは反省しなければならない。 決勝点だけではなく、三笘に決められた前半の2ゴールも“自責”に近い。 田中のキープから三苫が一気に中央に切れ込んだ1点目は、CB三浦弦太が発端をつくった。 パスを受け左サイドに流れた田中についていったが、そこで体を入れ替えられ、中央に切り込んだ三笘にパスを通されてしまった。ボールを奪えなければ、遅らせればいい。だが無理に奪おうとしたことで、決定的なパスを通される羽目になった。 付け加えれば、三浦が離れたゴール前の大事なポジションを埋めようとした選手も見当たらない。早急に安全保障体制を確立しなければならないだろう。