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コロナ禍と中国の海洋進出で崩れる秩序 急速に高まる原油輸送の地政学リスク

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 30年前の1990年8月2日は、湾岸危機(イラクがクウエートに侵攻し、併合した事件)が勃発した日である。当時の米国が世界に見せつけた軍事力や影響力は既に見る影もなく、中東地域の秩序の担い手が今、不在となりつつある。米国でシェール革命が起きたものの、湾岸産油国は世界の原油供給の主要な担い手のままの地位にいる。だが昨今のコロナ禍による原油需要の急落で深刻な財政赤字に苦しむ。中国の南シナ海への海洋進出も絡み、変わっていく原油輸送の地政学的リスクを、今後に向け整理する。(独立行政法人経済産業研究所上席研究員=藤和彦)  ▽サウジアラビアの苦悩  世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの第2四半期の財政赤字は291億ドルに達した。歳入の過半を占める原油収入が前年に比べて45%減少したからだ。深刻な財政状況に対処するため、7月から付加価値税を5%から15%に引き上げたが、さらなる増税が検討されている。

 サウジアラビアなど湾岸産油国は「レンテイア国家」と呼ばれている。石油など天然資源から得られる収入の一部を国民に享受させる代わりに、選挙権など政治的権利を認めないという国のあり方である。2011年に「アラブの春」が勃発した際、サウジアラビア政府は公務員や軍人の給料を2倍にするなどの措置を講ずることで国内の治安を維持してきたが、深刻な財政難のせいで「国民との約束」を果たすことができなくなりつつある。  7月23日には「高齢のサルマン国王が胆のう炎で入院した」との報道が世界を駆け巡った。株価が暴落するなど一部に動揺が見られたものの、30日にサルマン国王は無事退院した。息子のムハンマド皇太子への譲位は時間の問題と言われているが、ムハンマド皇太子が進める「脱石油改革」は遅々として進んでいない。むしろ強引な政治手法が災いして王族との対立は深刻化している。  ▽混沌のイラク、イラン、UAE  湾岸危機の主犯だったイラクの国内状況は、現在も混沌としたままで、最近の原油安によりサウジアラビア以上に痛手を被っている。公務員給与の遅配が発生し、バグダッドなどではコロナ禍にもかかわらず反政府運動が再び激化しつつある。消滅したとされるイスラム国の残党たちのテロも頻発している。

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