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ヒーローだった高校時代 冤罪は「生きづらさ」見知らぬ社会で起きた|#供述弱者を知る

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Forbes JAPAN

教え子のために「支える会」を立ち上げた恩師たちから、西山美香さん (40) に発達障害がある可能性を取材したことは、冤罪の可能性を訴える報道への大きなステップになった。次は、専門家の証言を得ることだった。 警察の不当な捜査が無実の彼女を自白に追い込み、虚偽供述で事件をでっち上げたいかがわしさを訴えることはできる。しかし、裁判で西山さんの自白に「任意性」「信用性」が認められている以上、冤罪を立証するには、そこを突き崩す必要があった。捜査の非をあげつらうだけでは「ひどい捜査だったとしても、やったことを本人が認めたなら、仕方がない」と反論されてしまうからだ。 冤罪の立証には「刑事を好きになったから(うその)自白をした」という自白の経緯を障害の観点から解明しなければならず、専門家の知見が不可欠だった。 見栄を張った幼少期 大人になっても嘘をついた理由 角雄記 (37) と井本拓志 (31) の両記者とともに、裁判で明らかになっていた西山さんの特徴的な行動履歴や、両親から聴き取りした幼少時からの生育歴をリスト化し、専門家のための分析資料として作成。その上で、発達障害に詳しい専門家の取材にあたった。 2人が作成し、専門家に示した成育・行動履歴は、要約すると以下のような内容だった。 × × × 【幼少期】  ・幼稚園の運動会で周囲の注目を浴びるため、運動会でグラウンドを反対回りに走った。(再審請求書) 【小学生】  ・授業中に立って歩いたり、落ち着かない(父証人調書) ・注目を集めるため、教室で飼っていた金魚を食べたり、洗剤を食べたりして、親と児童相談所のカウンセリングを受けた(再審請求書) ・希望して学級委員になったがクラスをまとめられなかった(両親メモ) 【中学生】  ・勉強ができずに、大声を出して授業を妨害し、両親が学校へ呼び出されて注意を受けた(父証人調書) ・優秀な兄たちと比べられ、自分を卑下するようになった、授業参観に行くとうれしそうにニコニコ後ろを振り向いて小さい子のようだった(母取材メモ) ・彼女の性格上、やっていないのに認めてしまうところはあると思った、人と交わるのが下手で、思っていることを言えない(恩師取材メモ) 【高校生】  ・比較的安定して過ごした。 【社会人】  ・亡くなった親が遺産を残してくれたと同僚にうそをついた、結婚する予定もないのに自分の結婚式で歌ってほしいと知人に依頼した(父証人調書) ・「彼氏と同棲している」「いつも彼に弁当を作ってあげている」など事実ではない話を同僚みんなが聞いていた(看護主任供述調書) ・仕事が雑、必ず2人ペアで行うように指導していた患者の体位変換や、おむつ交換等を1人で勝手に行ってしまう、患者への作業開始、終了等の報告連絡ができない(看護師長供述調書) ・看護師長から注意を受けると「また、言われた。私ばっかりや」と愚痴っていた、ミスを何度も繰り返す人(同僚看護師供述調書) × × × これらの行動履歴に基づいて、専門家に分析を依頼した。当時、主にこの取材に当たっていた井本記者から送られてきたコメントのメモをいま改めて読み返すと、専門家の指摘は、その後私たちが知る西山さんの実像と随所で重なっていることがよくわかる。

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