ドイツのブンデスリーガ厳格予防対策で無観客再開も残された危惧
ボールを蹴る刹那に生じる乾いた衝撃音が、無人のスタンドに何度も響きわたる。いつもは大歓声にかき消されて聞こえないピッチ上の選手たちや、ベンチ前のテクニカルエリアに立つ指揮官の声をマイクが拾う。スタジアムを取り巻く光景を一変させながら、ドイツにサッカーが戻ってきた。 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月11日を最後に中断されていたドイツのブンデスリーガが66日ぶりに再開。週末の2日間で、1部および2部の合計17試合が行われた。 MF長谷部誠とMF鎌田大地が所属するEフランクフルトもホームでボルシアMGと対戦。鎌田は先発、長谷部も後半に途中出場したが、得点に絡めず1ー3で敗れた。 フランス、オランダ、ベルギー各国の公式戦がシーズン途中で打ち切りになったのとは対照的に、ブンデスリーガはドイツサッカー連盟(DFB)とともに無観客試合での再開を見すえて、約50ページにおよぶ厳格なガイドラインを策定。各クラブが全体練習を再開させるだけでも31ものプロトコルを定めるなど、徹底した感染予防対策のもとでヨーロッパの先陣を切る形で再開を実現させた。 再開となる17試合へ向けても、微に入り細をうがつ形でプロトコルが定められた。選手およびコーチングスタッフは試合までの7日間にわたって、ホテルと練習場を往復するだけの完全隔離生活が義務づけられた。家族を含めた外部との接触をいっさい禁じられ、部屋を出るときのマスク着用やビュッフェ形式の食事の禁止、エレベーターのボタンを指ではなくひじで押すことなども求められた。 プロトコルの厳守が求められているなかで、アウグスブルクのハイコ・ヘルリッヒ監督がホテル近くのスーパーマーケットで、歯磨き粉とスキンクリームを購入していたことが発覚。ヘルリッヒ監督は1-2で敗れた16日のヴォルフスブルク戦でベンチ入りできなかったばかりか、PCR検査で2回続けて陰性が確認されるまでは、試合はもちろん練習での指揮も執れないことになった。 試合運営もスタジアムを内部、スタンド、スタジアム周辺の3つに区分けし、それぞれに立ち入れる人数を100人あまりに限定。ピッチ上でプレーする選手と審判団以外は全員がマスクを着用し、リザーブの選手たちはベンチではなくスタンドで密にならないように席を空けて戦況を見守った。 メディアの人数も限定され、記者会見場やプレスルームも閉鎖。取材はすべてオンライン形式で行われた。 さらに1700人を超える選手やスタッフは試合前日を含めて2度のPCR検査を受けて、陰性であることを証明して再開へ臨んだ。