[箱根駅伝]持っている実力を最も発揮できた大学はどこ? 波乱の展開、1位はやはり…
第97回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は13年ぶりとなる駒澤大学の逆転優勝で幕を閉じた。波乱の展開となった今大会で自分の持つ実力を箱根路に適応させながら発揮させることができたのは、どこの大学・選手だったのだろうか? (文=REAL SPORTS編集部、写真=KyodoNews)
自分の力を箱根路で発揮できた大学・選手は? 10000mの記録を箱根駅伝区間に換算
今年の箱根駅伝は、昨年11月の全日本大学駅伝で8区間中4区間で新記録が生まれていたこともあり、“史上最速”の高速レースも期待されていた。だがふたを開けてみれば、1区からファンや識者も驚くスローペースになり、優勝候補と目された大学が大きく出遅れ、代わりに創価大学が躍進を果たした。こうした波乱の展開となったレースの中で、出場した選手たちはいったいどれだけ自分の力を発揮することができたのだろうか? そこで今回、大会前に発表された10000mの公認最高記録を箱根駅伝の区間距離に換算し、実際の区間記録とのタイム差を比較するランキングを作成した。このタイム差がより低いほど、箱根路に適応させながら自身の持つ実力を発揮できたといえるだろう。 ランキング作成にあたり集計方法は以下の通り。 ・集計対象は、12月10日に関東学生陸上競技連盟が発表したチームエントリー、20チームとする(関東学生連合は対象外)。 ・チーム内の集計対象者は、今回の箱根駅伝で走った10人とする。 ・10000mの公認最高記録(以下、自己タイム)をそれぞれ実際に走った箱根駅伝区間距離に換算したタイム(以下、換算タイム)と、今大会での区間記録(以下、箱根タイム)のタイム差を算出する。このタイム差でランキング化する。 ・自己タイムは、12月10日のチームエントリーに記載の記録を使用する。ただし自己タイムがチームエントリーに記載されていない場合には、ランキング対象外とする。
1区:“史上最も遅い”といわれた展開でタイム差1位は意外にも…
区間ごとに換算タイムと箱根タイムのタイム差を見ていきたい。まずは1kmの通過タイムは3分33秒で「史上最も遅いのでは?」と言われた1区からだ。 ※()内の順位は、左が自己タイム、右が箱根タイムのもの。以下同 ------------------------------------------------------------------------------------------------- 1.日本体育大学 藤本珠輝(2年) タイム差-0:01:02(19位/8位) 2.東洋大学 児玉悠輔(2年) タイム差-0:00:22(18位/9位) 3.神奈川大学 呑村大樹(3年) タイム差+0:01:24(14位/4位) 4.専修大学 高瀬桂(2年) タイム差+0:01:35(17位/19位) 5.拓殖大学 合田椋(3年) タイム差+00:01:48(13位/11位) 6.国士舘大学 山本龍神(1年) タイム差+00:02:04(16位/18位) 7.法政大学 鎌田航生(3年) タイム差+00:02:11(11位/1位) 8.山梨学院大学 新本駿(1年) タイム差+00:02:40(15位/20位) 9.青山学院大学 吉田圭太 (4年) タイム差+00:02:41(9位/6位) 10.東京国際大学 丹所健(2年) タイム差+00:02:42(12位/14位) 11.城西大学 砂岡拓磨(3年) タイム差+00:02:50(7位/7位) 12.帝京大学 小野寺悠(4年) タイム差+00:02:52(10位/13位) 13.創価大学 福田悠一 (4年) タイム差+00:02:56(5位/3位) 14.國學院大學 藤木宏太(3年) タイム差+00:03:01(8位/12位) 15.東海大学 塩澤稀夕(4年) タイム差+00:03:08(1位/2位) 16.早稲田大学 井川龍人(2年) タイム差+00:03:13(2位/5位) 17.駒澤大学 白鳥哲汰(1年) タイム差+00:03:37(3位/15位) 18.明治大学 児玉真輝(1年) タイム差+00:03:40(6位/16位) 19.中央大学 千守倫央(2年) タイム差+00:04:06(4位/17位) - 順天堂大学 三浦龍司(1年) (-/10位) ※10000mの自己タイムがチームエントリーに記載されていないためランキング外 ------------------------------------------------------------------------------------------------- タイム差ランキング1位、2位になった日本体育大学・藤本珠輝、東洋大学・児玉悠輔は、換算タイムより実際に走った箱根タイムのほうが速くなった。自己タイムはトラックで計る上に、走る距離も箱根駅伝の場合は約2倍となるため、通常であれば換算タイムに比べて箱根タイムは遅くなるものと考えられるが、この2人は自分の実力をより発揮できたといえるだろう。 箱根タイムで区間1位となった法政大学・鎌田航生は、自己タイムでは11位だったが見事に躍進してみせた。 1区で大きな注目を集めていた東海大学・塩澤稀夕は、自己タイムで1位、箱根タイムでも区間2位に入ったが、タイム差ランキングでは15位となった。同様に、自己タイムで2位の早稲田大学・井川龍人、3位の駒澤大学・白鳥哲汰、4位の中央大学・千守倫央、6位の明治大学・児玉真輝は、それぞれタイム差ランキングで下位に沈んだ。彼らは28分台前半の自己タイムを持つ選手だったが、「史上最も遅い」といわれるスローペースの展開で自分の実力を発揮できなかったことがよく分かる結果となった。 全日本大学駅伝1区で新記録を出し区間賞に輝くなど、今回の箱根駅伝でも大きな注目を集めていた順天堂大学のスーパールーキー三浦龍司は、チームエントリーに10000mの自己タイムが記載されていなかったためランキング外とした。参考までに、1区でハーフマラソンの自己タイムが記載されていた16人でランキングしたところ、自己タイムでは1位だったものの、箱根タイムで区間10位、タイム差ランキングでは15位となった。この悔しさをばねに、これからの活躍に期待したい。