<小野憲史のゲーム時評>パッケージからダウンロード、そしてサブスクへ 移り変わるゲーム流通の歴史
超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発・産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、ゲーム業界の流通の歴史を振り返ります。 【写真特集】裁判といえば「逆転裁判」舞台版で再現度MAXのキャラクターが
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ユーザーに定額の利用料を支払ってもらうことで、商品やサービスを一定期間提供する「サブスクリプション(サブスク)」モデルが広がっている。ゲーム業界でもマイクロソフトが2017年6月に「Xbox Game Pass」を開始したのに続き、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが2022年3月、会員制サービス「PlayStation Plus」のアップデートを発表した。6月1日から「エッセンシャル」「エクストラ」「プレミアム」コースが始まり、「プレミアム」では年間で1万250円を払えば、数百本のPS4、PS5ソフトを楽しめるほか、初代PSタイトルをはじめとした、膨大なゲームを楽しめるようになる。
もっとも映画などと同じく、ゲームでもサブスクモデルが機能するか否か、疑問視する声もある。ストアにもよるが、新作ゲームが発売日からサブスクで配信されるとは限らない。一方で、AAAゲームではクリアまでに何十時間もかかる例は珍しくない。その間、他のゲームが楽しめないのであれば、遊びたいゲームだけを個別に買う方が合理的という見方もできるからだ。一方でサブスクモデルには、さまざまなゲームを少しずつ試せる良さがある。そのため、しばらくはサブスクモデルと買い切りモデルが併存する時代が続くと思われる。ユーザーにとっても、自分のゲームライフにあった選択が求められるだろう。
一方でPS初期の時代を知る業界人にとっては、また違った見方ができるのではないだろうか。良く知られるように、PSの立ち上げはゲームの流通改革とセットだったからだ。スーパーファミコン全盛期の1990年代初頭、玩具流通は混迷を極めていた。問屋間での抱き合わせ流通や逆流通、一部問屋の買い占めによる価格操作などがまん延していたのだ。そこにメスを入れたのがソニー流通だ。「初回重視ではなくリピート重視」「定価販売の遵守」「中古販売の禁止」など、CD-ROMの特性を活かした、さまざまな施策が行われた。当初は賛否両論だった小売店も、PSのシェア拡大とともに、賛同者が増えていった。