「ジェンダー平等」全国1位は、2年連続でまさかの鳥取県庁 秘密は元知事が30年前に始めた“種まき”にあった
「これは明らかに作られた能力差だ」。まず手を付けたのは、秘書課や財政課といった中枢部署の態勢見直しだ。特に、財政課の予算編成は、年末の寒い時期が業務のピークで、徹夜で作業することもあった。「男がやる、きつい仕事」との固定観念があった。 そこで打ち出したのは、「徹夜や長時間労働のない財政課にする」との方針だ。冬に集中する仕事を夏にも振り分け、業務を平準化した。人手を増やし、業務のデジタル化にも努めた。その上で、職員の3割を女性にすることにした。 例えば、河川工事や土石流対策などの公共工事の現地視察。以前は冬の予算編成のさなかに、タイトスケジュールで視察も行い、負担感が大きかった。「予算を付ける際、現地を見ておかないと、どうしても机上の空論になる」。だが、予算要求されそうなものは、夏ごろにはすでに固まっている。担当課に早めに情報共有してもらい、視察を前倒しすることにした。 公報のペーパーレス化をきっかけに、予算編成のペーパーレス化、エクセルなどを活用した効率化も進めた。結果的に職員の残業は大きく減った。
こうした取り組みが、どんな変化につながったのだろうか。「予算の出来栄えが良くなった。それまでは、商店の顧客の半数が女性なのに、店員が男性だけだったようなものだった。男女共同参画の視点で、県民への行政サービスを考えると良い施策ができると実感した」 女性がお茶くみなどをしていた秘書課は、職員数を男女半々にすることから始めた。ただ、それだけではうまくいかない。知事の日程確保などで部屋を訪れる他部署の職員が、男性職員にしか物を頼まないためだ。部屋に女性しかいない時には、「また来ます」と引き返すことすらあった。 「これではいけない」と、課員を全員女性にし、課長職をやめてフラットな組織に変更。いやがおうにも、女性職員に頼まなければいけない環境を作った。「男性の中には、『女性に頭を下げたくない』『ちゃんと仕事をしてくれるのか』などと考える人も多くいた」 ▽男性部長が育休経験を県議会で報告 他にも、さまざまな取り組みを進めた。「男性も庶務に配属する」「人事担当が配置の偏りがないかをしっかりチェックする」。態勢を整えた上で、女性にもキャリアの門戸を開き、男女の固定的役割観念を払拭させようと努めた。「男性管理職に『女性に頼んだら、ちゃんとやってくれる』という当たり前のことを、実体験させる必要があった」