いきものがかり これからも歩き続けてくれる3人の勇姿。横浜アリーナから届けられた、デビュー15周年の特別配信ライブを振り返る。
いきものがかりがデビュー記念日の前日の3月14日に、横浜アリーナから無観客配信ライブ「いきものがかり デビュー15周年だよ!!!~会いにいくよ~特別配信ライブ」を開催した。今回は無観客配信という形でのライブだが、いきものがかりがワンマンライブで横浜アリーナのステージに立つのは約6年ぶりだ。 【写真】「いきものがかり デビュー15周年だよ!!!~会いにいくよ~特別配信ライブ」の模様 開演時間の17時を過ぎ、横浜アリーナの客席にいる3人が映し出されると、吉岡聖恵が「みなさん、こんばんは。いきものがかりです。お久しぶりです。今日は一緒に楽しい時間を過ごしましょう」と挨拶をし、3人だけで「会いにいくよ」のアコースティックバージョンを事前収録した映像で届けた。グループ結成20周年のアニバーサリーイヤーだった2020年は、新型コロナウィルス感染拡大の影響を考え、予定されていたホールツアーとアリーナツアーを全公演中止するという決断をしただけに、今回は無観客配信ライブという形ではあっても、いきものがかりを待っていてくれる人たちに、今の3人の思いを込めた「会いにいくよ」をいちばん最初に届けたかったんだと思った。 視聴画面が切り替わり、ライブのリハーサルや会場設営の様子を追った映像が「太陽」をBGMにして流れ始めた。コロナ禍で自分の仕事ができない時期を過ごした多くのライブスタッフたちがこの映像の中で見せた笑顔からは、彼らもまた再びライブができる日を待ち望んでいたことが、そして、この日に向けた思いはひとつなんだなということが十分に伝わってきた。そんな映像が流れたあと、バンドメンバーたちと3人が舞台裏で円陣を組んでいる場面へと切り替わる。ソーシャルディスタンスを保つためにお互いの手のひらは距離があったけれど、「サン、イチ、ゴは明日だからサイコーのライブになると思うよ!」なんていう(恒例の?)吉岡のダジャレを交えた円陣コールが元気よく響いた。バンドメンバーと共にステージへと向かう生映像には、3人からの今の思いを刻んだメッセージが重ねられ、「みなさんの今が、明るくなるように。そして僕らも、前に進むために。今日は一緒に楽しみましょう。いつも、ありがとう」の言葉があった。 さぁいよいよいきものがかり初の無観客ライブがスタートだ。全員が定位置にスタンバイし、水野が「まずはこの曲から聴いてください」と言って始まったのは「笑顔」。歌の合間にカメラに向かって何度も手を振ったり、「観てる?」と声に出したりと、カメラの向こうにいるみんなとコミュニケーションを取る、吉岡。この曲の後半にはステージの後ろにあるスクリーンモニターに「笑顔」を歌うファンの姿が次々と映し出された。その映像は事前にファンに募った動画だが、今この瞬間も全国各地でこの生配信ライブを観ながら、たくさんの人たちが「笑顔」を一緒に歌っているんだろうなと思った。吉岡の声から始まった「茜色の約束」は14年前に発表したこの曲だが、今の私たちの日々に重ねられて、あらためて心に響いた人も多かったんじゃないだろうか。 「こんばんは いきものがかりです。体調はいかがですか?」(吉岡)という言葉から始まったMCで、水野は「やっぱ、本番だね。(目の前には)お客さんがいないけど、観られてるんだ、画面の向こうにいるんだなって思うだけで空気が違うよね」と言った。そして、ライブの最初のMCで吉岡が必ずやっている恒例の「みなさん こんにツアー!」のコールを、今回は山下と水野もやるという珍しい場面もあった。 MC後は、吉岡の「女の子、元気―? 男の子、元気―?」のコールがあった「気まぐれロマンティック」を。この曲をライブでやる時はお客さんたちが吉岡と一緒にフリをする。今日はみんなと一緒にできなくても、いつもと同じようににこやかにフリをし、ステージの端から端まで走り、ジャンプする彼女の姿を見て、なんだか胸が熱くなってしまった。つづく「アイデンティティ」では、<私は今 夢中で生きていくんだ>と、左手でマイクを握りしめ、右の手のひらをギュッと握りしめながら歌う吉岡の姿が印象的だった。また、山下が軽快なハープを聞かせる「KIRA★KIRA★TRAIN」では視聴画面にキラキラした光がいくつも流れ、配信ライブだからできる演出が施されていた。 「みなさんの旅立ちに向けて、これからも大切に育てていきたい曲です」と吉岡が言ったあと、「YELL」が演奏される。もともと合唱コンクールの課題曲として作ったこの曲を、力強いバンドの音に乗せ、吉岡の歌に重ね合うように掛け合いながら水野と山下も歌う。3人がそれぞれソロパートで歌う部分がある「夏・コイ」は、恋を歌ったサマーソングだが、歌詞にある<僕の行く先を想像してみる>というフレーズは、できないことが多い今の時代を生きる私たちの未来に光を当ててくれたんじゃないだろうか。 生配信映像からFMヨコハマのラジオブースに3人が座っている映像に切り替わる。FMヨコハマは、メジャーデビュー前のいきものがかりが初のレギュラー番組「寄り切り! 押し出し!!上手投げ!!!」を持ったラジオ局。今も山下は自分のラジオ番組「上手投げラジオ!!!」の収録でFMヨコハマに通っているが、あの頃と同じブースに入り、同じ座り位置で面と向かった途端、一瞬でタイムトリップしてしまったかのように、3人からはあの頃の自分たちのことや番組にまつわる思い出話が次から次へと飛び出した。「ここでやる曲は決まっているよね。スタートの曲をスタートの場所でやりたいと思います」と、水野。吉岡は「このスタジオでも歌った『SAKURA』」と曲紹介をし、思い出がたくさん詰まったブースで向き合いながら、アコーステックバージョンでデビュー曲を届けた。 VTRが終わると再び画面は横浜アリーナ会場に移り、「ありがとう」「きらきらにひかる」を重厚感のあるバンドサウンドに乗せて届け、スピード感あふれる最新曲「BAKU」につづいたライブの定番曲「じょいふる」へと続く。「じょいふる」ではデビュー15周年にちなんで15回もジャンプした山下のようにジャンプしたり、いつものライブと同じようにタオルをくるくる回した視聴者がたくさんいたに違いない。今日のライブは目の前に観客はいないけれど、みんながいることを思いっきり感じながら歌い、演奏し、自然と笑顔がこぼれている3人を見て、オープニング映像で流れた3人のメッセージには、「元気を出して、なんておこがましくて言えないけれど、そのきっかけになるようなライブができたら。チームみんなで、そう思っています」という言葉があったことを思い出し、いきものがかりの3人もこの配信ライブができたことで前を向くことができ、次の一歩を踏み出す元気をみんなからもらったんだと思った。 「自分たちの15年の始まりの曲。この曲を歌うと当時のあったかい空気を思い出すし、これからも頑張ろうって思える。この歌を歌ってまた次に進みたいと思います」と吉岡。本編最後「SAKURA」を届け、最後に3人は一礼してステージを降りた。 いつものライブなら、アンコールの声や拍手は会場に鳴り響くが、今回は無観客ライブなので静かな時間が流れていく。そんな中で生配信されたのは、ステージ近くに設けられた待機場所で談笑しているバンドメンバーを生配信するという映像だった。これも普段のライブではなかなか見られない貴重なシーンだろう。水野、山下、吉岡が揃ってバンドメンバーと共に再びステージに登場すると、水野から嬉しいお知らせが! すでに発表されている有観客ツアー「いきものがかりの みなさん、こんにツアー!! THE LIVE 2021!!!」に追加公演(5月7・8日/幕張メッセ、6月10・11日/横浜アリーナ)が決定したこと、そして、3月31日にリリースするニューアルバム『WHO?』収録曲の「TSUZUKU」が映画『100日間生きたワニ』のテーマソングに決定したことが伝えられた。 「2020年は“続く”ということが難しい1年で。これからもこの困難は続くと思います。自分の感情を丁寧にすること、目の前の日々を大切にすることがすごく大事になっている。そんな意思を込めて、このタイトルにしました」と水野は言い、「僕らも続けていきたいと思っているので」と言葉を続けて、「TSUZUKU」を初披露した。この世の中に生きている一人ひとりに、そして、いきものがかりや3人にも、“続き”があるんだということを思わせてくれた「TSUZUKU」は、小さな歩幅でもいいから未来に向かって歩いていきたいと思える曲だった。暗転後、吉岡の歌声から「風が吹いている」が始まる。この曲の後半には3人がステージ上から誰もいない客席フロア中央へと移動した。「次は、会おう! みんな、元気でね!」の言葉と、3人の名前がそれぞれの手書き文字で書かれたステージ上のスクリーンを背にして、<ここで生きていく><ここに希望はある>という言葉が刻まれたこの曲を、アンコールの最後に届けると、深々と一礼をした。すべてのパフォーマンスを終え、客席フロアを歩きながら、「また会おうね」「ありがとう」「体に気を付けてね」とカメラに向かって話しかけ、視聴者が観ている画面から3人が見えなくなるまで笑顔で手を振っていた彼らは、これからもいきものがかりを動かし、続ける決意を持ったとても清々しい顔をしていた。 【この配信ライブのチケットは、3月21日12時まで、3,915円(サンキュー15周年価格!)で販売され、アーカイブは3月21日16時59分まで視聴可能。3月14日の生配信を見逃した方も、オンタイムで観ていた方も、何度でも観ることができます】 文 / 松浦靖恵 撮影 / 岸田哲平 ◆いきものがかり デビュー15周年だよ!!!~会いにいくよ~特別配信ライブ 2021年3月14日 横浜アリーナ 《 SET LIST 》 0.会いにいくよ 1.笑顔 2.茜色の約束 3.気まぐれロマンティック 4.アイデンティティ 5.KIRA★KIRA★TRAIN 6.YELL 7.夏・コイ 8.ありがとう 9.きらきらにひかる 10.BAKU 11.じょいふる 12.SAKURA ENCORE EN1.TSUZUKU EN2.風が吹いている いきものがかり これからも歩き続けてくれる3人の勇姿。横浜アリーナから届けられた、デビュー15周年の特別配信ライブを振り返る。は、WHAT's IN? tokyoへ。
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