カマチ陶舗、レストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」で受賞 有田焼とフレンチ融合
ミシュランガイドと並ぶフランス発祥の本格レストランガイドブック「ゴ・エ・ミヨ」ジャポン2022のイノベーション賞を、武雄市山内町の有田焼業務用食器製造会社のカマチ陶舗が受賞した。蒲地勝社長(52)は「伝統ある有田焼をフレンチやイタリアンなど洋食の世界に浸透させたことを評価してもらった」と喜んでいる。 カマチ陶舗は1953年創業。業務用和食器の製造販売で実績を積んできた。90年代のバブル崩壊後に経営が厳しくなったため、2001年にフレンチやイタリアン向けの洋食器開発を開始した。蒲地社長は「わずか20年前の話だが、有田焼の伝統に反するといわれ、地元では誰にも相手にされなかった」と振り返る。 試作品を持って東京の有名ホテルを訪ねると、シェフから「有田焼の洋食器に料理を盛るとフレンチが和食になってしまう」と笑われ、悔しい思いをした。国内の営業に見切りを付け、得意先の紹介で単身フランスに渡った。最初は「アリタヤキってなに?」という反応だったが、徐々に話を聞いてもらえるようになった。 本来は失敗作となる縁の垂れ下がった皿に興味を示すシェフが現れ、「縁とテーブルの間に親指が入るようにしてほしい」「皿の中央に溝を入れて料理を盛れるように」などと要望を出してきた。日本で改良してすぐに戻ると仕事の速さと正確さが評判になり、別のホテルやレストランからも声が掛かるようになった。 現在は18カ国の27店舗と取引があり、著名なフレンチシェフのドミニク・ブシェ氏やニューヨークの人気シェフ、デビッド・ブーレー氏からも高い評価を得ているという。 コロナ禍のため3月に開かれた表彰式はオンラインでの参加だった。蒲地社長は「自分たちはシェフや料理を引き立てる黒子なので、あまり目立ちたくはないが」としつつ、「焼き物業界はもうダメだと思っている若い人たちに、この賞を取ることで何か指針を示すことができるのでは」と笑顔を見せた。(澤登滋) ゴ・エ・ミヨ フランス人ジャーナリストのアンリ・ゴとクリスチャン・ミヨの2人が1972年に創刊したレストランガイド。世界15カ国で展開し、2017年に日本版も発刊された。フランスの料理界では、ガイドブックの表紙の色から「ミシュランの赤」「ゴ・エ・ミヨの黄」で知られる。
澤登滋