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いま「eスポーツマンガ」が面白い! アスリートの情熱・百合・SFまで、多彩な作品をご紹介

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今から10年前の2010年。ウメハラ(梅原大吾)が日本人として初めてアメリカのゲーム用周辺機器メーカー・Mad Catzと契約した当時、「プロゲーマー」という言葉はまだ世間には浸透していませんでした。日本では法的な問題で高額賞金を出すのが難しかったことや、PCゲームよりも遥かに普及していた家庭用ゲーム機の高度な発達、ゲームセンターでのローカルな対戦が盛況であったことなどにより、いわゆる「eスポーツ」の発展は他国よりも遅れていました。 【画像】「eスポーツマンガ」表紙 しかし、それから10年経った現在、eスポーツは急速に発展しプロゲーマーもその知名度や社会的な地位を高めています。 2018年2月には5つの団体が結束してJeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)が発足。同年末に行われた国産ゲームである『Shadowverse』の世界大会では、優勝選手が国内最高賞金額となる1億円を獲得し大きな話題となりました。2019年に行われた『Dota2』世界大会の賞金総額は何と約37億円。今やトップクラスのプロゲーマーが得る収入は、一流のスポーツ選手が得る収入と遜色がありません。 中学生男子が将来なりたい職業でも、プロゲーマーは1位のYouTuberに次いで2位となりました。eスポーツという言葉も世間でもてはやされるようになり、ゲームを取り巻く環境は激変しています。 eスポーツは物理的なスポーツとは異なり、性別や人種、体格差といった先天的な要素によるハンデが生じにくいという特徴があります。2022年のアジアオリンピック中国・杭州大会ではメダル種目となることが正式に決定しており、今後もその注目度を世界中でどんどん高めていくことでしょう。 このようになってくると、マンガ業界でもeスポーツを扱った作品が増えてきます。1978年に「コロコロコミック」で読切が掲載、その後連載もされた『ゲームセンターあらし』はeスポーツマンガの元祖とも言える存在ですが、それから40有余年。ここ数年で登場した、今お薦めしたい作品を紹介していきます。 文 / 兎来栄寿 ◆「eスポーツ界を描く」ことに真正面から取り組む ■『東京トイボクシーズ』うめ(小沢高広/妹尾朝子) ゲーム業界を舞台にしたビジネスマンガ『東京トイボックス』シリーズのうめによる最新作。天才的なセンスを持つゲーマーを主人公に据え、私立高校に日本初の全日制eスポーツ科を新設するという設定のもと、eスポーツというテーマに対してがっぷり四つに組んでいく内容となっています。 『東京トイボックス』シリーズでも表現規制や創作の在り方そのものなど当時の最新トピックを交えながら深いテーマへと切り込んでいましたが、そのテイストは本作でも健在です。 熟練者と初心者それぞれの視点からゲーム自体の面白さ、それを競技として行う時の熱さが描かれる一方で、まだゲームへの偏見がある大人や、ゲームを愛しながらもeスポーツという括りに馴染んでいないプレイヤーなど、現実の世相をリアルに反映した人物たちによって物語は織り成されていきます。 「ゲームはスポーツという言葉を纏うことで何を手に入れ何を失うだろう」 という冒頭の言葉に、この物語が取り組もうとしているものと覚悟が如実に表れていると言えるでしょう。 eスポーツは華々しく発展していますが、その裏にはさまざまな課題や問題も存在し日々議論されています。本作がそういった部分へ切り込んでいき、どのように語っていくのかはゲーム文化を愛するすべての人が注目するに値します。 なお、本作は『大東京トイボックス』の後の世界となっており、シリーズを読んでいるファンには馴染みのある場所や固有名詞が随所に出てきてニヤリとさせられます。ただ、シリーズを読んでいなくても完全新作として楽しむことも問題なくできる内容となっています。 また、数多あるゲームジャンルの中でもルールが一番解りやすい格闘ゲームを中心に描かれているので「そもそもeスポーツって何?」という人が今現在起きていることを学ぶにも最適なeスポーツマンガです。 ◆殴り合い、心を折り合う百合 ■『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』 江島絵理 2019年末、集英社のマンガ投稿サービス「ジャンプルーキー!」に投稿された格ゲー×お嬢様マンガ『ゲーミングお嬢様』が、その秀逸な言葉選びのセンスや格ゲーマーあるあるによってプロゲーマーたちの間でも話題になっていました。 そして、シンクロニシティのように同時期に新連載が発表され、2020年1月から「コミックフラッパー」(KADOKAWA)にて連載が始まったのが『対ありでした。』です。 作者は名作百合マンガ『柚子森さん』の江島絵理であり、『対ありでした。』も二人のかわいい女の子が主軸となっているガールミーツガールストーリーです。 本作は元々格ゲーにのめり込んでいたものの心機一転して全力でお嬢様として生きようとお嬢様学校にやってきた主人公の綾が、全校生徒の憧れである淑女……と思いきや実は格ゲーが大好きなヤバイ女である“白百合様”と出逢うところから始まります。 本作では何といってもキャラクターのライブ感が素晴らしいです。普段は物静かでお淑やかながら勝利への執着心が強く、本質的にはコミュ障な“白百合様”が荒ぶる姿を見ているだけで美味しくご飯が食べられます。 百合というジャンルはどんな関係性をどのように描くか、というところが非常に肝要なジャンルです。その点において、本作は普通にお嬢様女子校にいては出逢うことが極めて難しい、あまつさえ同じタイトルをやり込んでいる格ゲーマーであるという、運命的で必然的な関係性であることが説得力を持っており秀逸です。 ゲーム機の持ち込みも厳しく禁じられた学校で人目を忍んで密会し、格闘ゲームの対戦を繰り返す。それを通して絆を育んでいく、というシチュエーションが堪りません。心を摘むような闘い、それは互いを剥き出しにしてぶつかり合う極めて濃密な極上のコミュニケーションです。 果たして二人の今後がどうなっていくのか、楽しみに見守っていきたいです。 ◆最後の闘いに心が震える隠れた名作 ■『青天』 Cボ 本作は、最強のゲーマーが国宝として扱われる、25世紀を舞台に描かれる未来のeスポーツマンガです。 大規模な大会に突如乱入してきた異常な強さを誇るプレイヤー・空ビヨンドを世間はCPUを使ったイタズラであると断じる中、主人公の少年トウト・ルイだけは一定の反応速度の中で0.04秒だけ人間的な遅延があることを見抜き、プロになることよりも「プロより強い」この世のどこかにいる空ビヨンドを見つけて倒すことを目標にします。 天才が見せる超絶的なパフォーマンスというものは、いつの世も人々を魅了します。そして同時に、憧れを持ちながらもその領域に至るまでの圧倒的な断絶に畏れすら抱きます。本作では、その天才が生む超常的な魅惑と畏れが見事に可視化されています。強者が持つ気迫やオーラが放つ熱情に、胸を焦がされます。 この物語では、何よりもトウト・ルイと空ビヨンドのゲームを通した関係性の描き方が素晴らしいです。圧倒的に格上の存在として現れた存在がやがてライバルとなり、仲間となり、そして当てはまる言葉のないどこまでも濃い関係へとなっていく。 とりわけ最終話の筆舌に尽くし難い戦いは神聖という表現すら相応しいもので、読み終えた後は空のあまりの青さに涙が流れる時のような感情に見舞われました。ゲームを通して、人が生きるとは何か、何のために生きるのかといった根源的なテーマにも迫っています。何かに命を懸けるほど没頭したことがある人ほど、共感できる内容ではないでしょうか。 もっともっとこの異端の才能が垣間見せてくれる神域の世界を鑑賞していたかったのですが、惜しくも3巻という短い巻数で完結しています。1,2巻だけでは判らない魅力が3巻には存在するのですが、その3巻だけ紙の書籍が出ず電子書籍のみの発刊となっているため若干マイナーになってしまっている感があるのが非常に勿体ないです。ゲーム好きの方にもそうでない方にもぜひ最終話まで通読して欲しい名作です。 ◆ヴィジュアルで楽しむスタイリッシュ電脳戦 ■『バトルメサイア』 漫画:吉原基貴、原作:さくらいとおる 『ストリートファイター』、『鉄拳』、『ギルティギア』など実在のタイトルが挙げられながら、その地続きとして近未来に生まれた最新テクノロジーによる対戦格闘ゲーム「バトルメサイア」で闘う者たちを描いた作品です。 原作者・さくらいとおるは格闘ゲーム『アルカナハート』の生みの親であり、また作画を担当する吉原基貴も格ゲーマーということで、随所に深い格ゲーへの造詣や愛に溢れた描写が登場します。 「バトルメサイア」は先進的なAIを搭載しており、脳波での操作することをベースに作られているゲームなのですが、主人公の天使(あまつか)ユウキは過去の遺物となっている「リアルアーケードプロ」と呼ばれるアーケードコントローラーを用いて、アナログ操作で強敵たちと鎬を削っていくという設定になっています。 実はこのユウキが使っている「リアルアーケードプロ」の中でも「隼」というタイプのものを筆者も実際に愛用してきたので、格ゲーマーとして非常に親近感が湧きました。 ゲームセンターには超大型の3Dディスプレイが設置されており、ギャラリーはそれを観て楽しむこともできるという近未来のゲームセンターの様子にも心躍ります。富士山火口に専用のスタジアムが建設されているなど、フィクションならではの外連味たっぷりの設定も面白いところです。 本作の見どころは、何と言ってもスタイリッシュでハイレベルな作画とそれによって描かれるバトルの熱量です。近未来のゲームの魅力と熱さがヴィジュアルとして十全に表現されており、読んでいて滾ります。 ただ、大変残念なことに2017年に原作者が逝去され、既刊1巻で単行本の刊行もストップしている状態です(2020年現在)。続いていれば傑作として広く名を馳せたかもしれないと思うと非常に惜しいですが、読める部分だけでも十分に面白いため今回挙げさせていただきます。 ◆元祖百合×対戦格闘ゲームマンガ ■『いつかみのれば』 西 あすか 「コミック百合姫」で対戦格闘ゲームを題材にした作品が始まると聞いた時は衝撃を受けました。そして、蓋を開けてみると想像していたよりも遥かに専門的な用語や知識が詰め込まれており、かわいい絵柄とのギャップに驚かされました。 この物語は格闘家を父親に持つ少女・みのるが、まったく未経験の対戦格闘ゲームとそのプロを目指す少女・四条に出逢うところから始まります。作中では『鉄拳』や『機動戦士ガンダム vs.』シリーズを元にしていると思われるゲームでの対戦の様子が繰り広げられていきます。 「初心者相手にあったまって…投げから起き攻めでハメて殺しちゃった…!」 「CPUボコるだけなら対戦じゃなくてもいいわけだしやっぱり生きた人間をめちゃくちゃにしたい…」 といった美少女から出るには物騒な作中のセリフは、対戦に取り憑かれた人間のメンタルを的確に表しており、格ゲーマーの熱い共感を生みました。 本作の連載開始は2016年ということで、プロゲーマーを目指す四条に対して「日本では景勝法のせいで賞金も少ないし社会的地位も低いし趣味でやれば良くない?」と言うキャラも登場します。 このように、過渡期に描かれた作品それぞれにおけるプロゲーマーという存在に対する意識の差の表れを感じることができるのも、eスポーツマンガを読む面白さです。 何のためにゲームをするのか。勝つためなのか? 楽しむためなのか? 遊びでやるだけならこんなに真剣になってやる必要があるのか? などといった問いかけもあり、読んでいて感じ入るところも多いです。 連載は一旦終了していますが、作者の中ではその後の展開の構想もあるそうなので、ぜひいつかみのるたちがチームを組んで世界の舞台で強敵たちと闘うところも読みたいです。 上記の作品以外にも、アニメ化もされて現在続編が連載中の『ハイスコアガール』、「光速は俺らには遅すぎる」の名言が有名な『電脳格技メフィストワルツ』、バトルロイヤル好きギャルを描く『GGWP! -グッドゲームウェルプレイド!-』など数多くの名作が描かれています。またフランスでも『Versus fighting story』という格闘ゲームを題材にしたeスポーツマンガが登場しています。現実の競技シーンと併せてますます注目です。 いま「eスポーツマンガ」が面白い! アスリートの情熱・百合・SFまで、多彩な作品をご紹介は、WHAT's IN? tokyoへ。

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