コロナ再感染が増加、かかるほど高まる後遺症のリスク、米CDCは最新ワクチンを全員に推奨
子どもがいる家庭で感染リスクが高い、XBB.1.5対応ワクチン間もなく接種開始
獣医師で英パーブライト研究所のウイルス学者でもあるメナズ・クレシ氏は、新型コロナワクチンの初回接種もブースター(追加)接種も受けているが、これまでに7回も新型コロナに感染している。 ギャラリー:人類が地球を変えてしまったと感じる、空から撮った絶景 写真23点 最初に感染したのは、パンデミックが始まったばかりの2020年3月だった。症状は軽く、主な症状は嗅覚と味覚がなくなった程度で、あとは2、3日の発熱と痛みとかぜ症状ですんだという。 しかし、続いて家族全員が感染してしまった。家族の症状は重く、入院や酸素吸入を必要とする人もいた。2人の子どもの母親で、育児や介護を主に担うクレシ氏には、自分の症状について考えたり治療したりする時間はほとんどなく、「自分のことを忘れかけていました」と言う。しかし新型コロナはクレシ氏を忘れなかった。 以来、氏は4カ月から6カ月おきに新型コロナに感染している(こんなに詳しく分かっているのは、自身がウイルス学者で、異変を感じたらすぐに検査を受けているからだ)。感染するたびに生活をかき乱しただけでなく、症状は再感染のたびに深刻になっていった。 直近の感染は本当にひどかったという。氏はまる1週間寝込み、立っているのもやっとという状態だった。それだけではない。認知機能が極端に低下して、「まともにものを考えることができませんでした」と氏は話す。
増える再感染
米疾病対策センター(CDC)が、2021年9月から2022年12月までに米国の検査機関で確認された成人の新型コロナ症例を分析したところ、2021年後半にデルタ株の感染者が急増したときには、再感染が占める割合は約2.7%にとどまっていた。 しかし、オミクロン株が出現し、より感染力の強いオミクロン株亜系統が優勢になると、状況は著しく悪化した。再感染が占める割合は、オミクロン株BA.1系統によるピーク時には10.3%、BA.2では12.5%、BA.4/BA.5では20.6%、BQ.1/BQ.1.1では28.8%まで上昇していた。 なお、再感染者の数は過小評価されている可能性が高い。感染していても無症状なら、検査を受けることはないからだ。2023年2月に発表されたレビュー論文によれば、再感染の約4割は無症状だったという。 さまざまな国の研究から、再感染の割合は5~15%であることが示唆されている。セルビアでの研究によれば、2021年末のオミクロン株の出現を境に再感染の割合が跳ね上がった。 2021年4月に医学誌「The Lancet」に発表された論文によれば、いちど新型コロナに感染して免疫を獲得すると、平均7カ月間は再感染を防ぐことができるが、免疫はやがて減衰する。このウイルスに何度も感染することは、たとえ軽症であったとしても有害だ。2022年11月に医学誌「Nature Medicine」に発表された、米国の退役軍人を対象とした研究で示されているように、後遺症のリスクや健康への影響は感染を重ねるごとに積み重なっていくからだ。 退役軍人は高齢の白人男性が多く、一般市民とは集団構成が異なるが、この研究は、新型コロナに感染するたびに、糖尿病や、腎臓や肺や心臓などさまざまな臓器の病気、メンタルヘルスの問題などを発症したり、死亡したりするリスクが高くなることを示している。