【K-POP対談】ヒット曲には「トレンディな声」が重要! 歌の上手いアイドル分析〈中編〉
J-POPは歌が下手? 原因は日本語?
ゆりこ「もうひとつ質問してもいいですか。歌唱力のほかに、魅力のある声というのがありますよね。反対に歌自体は上手いけれど、アーティストとしての魅力はうーん、という人もいるかと思います。73からみて魅力のある声とは?」 73「私はもともと演歌が大好きなので、言葉を届ける伝達力と感情をどう届けるのかという技術、表現力といわれるもの、それが重要だと思っています。楽曲のリズムに対して声をどんなふうに乗せ、どんなグルーヴを出すのか。その技術を冷静にコントロールしながらも、感情的に歌える人は、プロだなと思います」 ゆりこ「譜割り通りではなく、0.1秒遅らせたり、あえて前に乗せたりして、グルーヴ感を出していくということですか」 73「そうです。そこが抜群に上手いのは、ちあきなおみさんです。ここからどんどん抽象的な説明になりますけど、例えば、ONE PACTのジェイ・チャンさんの声は、振動する波が言葉の前の方にあるタイプで、欧米のポップスによくある表現方法です。一方で、J-POPは後ろに波動があることが多いんですね。それに、日本語は1音ずつ『子音+母音』で構成されているから、どうしてもカクカクした音になって、今のダンスミュージックのトラックにフィットしにくいんですね」 松田「それが逆に、世界からJ-POPは特殊で面白いとかカワイイと言われたりする理由なんでしょうか」 73「そうかもしれません。ただ、日本語を母語とする人がK-POPでのデビューを目指そうとすると、そこが苦労するところになります。それから、最近は、日本でもK-POP風のダンスミュージックもありますが、そのボーカルも言葉の響きの角張を削ぎ落としさらに前めのグルーヴで響かせる作業が必要なんですね。それをしないと、いわゆる『日本風のダンスミュージック』になってしまう。最近は韓国のプロデューサーを日本に招いてディレクションしてもらうケースが増えていますが、でもね、わざわざ韓国から呼ばなくても、日本人のボーカルトレーナーでもちゃんとそこに気付いている人はいるんですよ。お仕事ください! 待ってます!」 松田「日本語を母語とする人でも、imaseさんやAyumu Imazuさんは、洋楽のように歌いますよね。彼らの曲が海外でも評価されているのはそういうところもあるんですね」 ゆりこ「お話を聞いて、すごく納得しました。たまに日本人より韓国人の方が歌が上手いという説を耳にするんですけど、いや日本にも歌が上手い人はいるよ?とモヤモヤしていたんです」 73「トレーニング次第だと思うんですよ。XGは全員日本人なのにめちゃくちゃ歌やラップのレベルが凄まじい! もちろん彼女たちの生まれ持った素晴らしい才能、そして努力の賜物ではありますが、あのレベルのトレーニングを日本でも受けられたら、XGのようなハイレベルなグループが誕生するかもしれませんよね! 夢がありますね!」