J1独走優勝を成し遂げた川崎フロンターレの強さを福西崇史が分析「競争意識が生まれたことでチーム力が一気に高まった」
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本のサッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史さん。 そんな福西さんの目に今の日本サッカーはどのように映っているのか? 全4回にわたり、今の日本代表やJリーグについて、ご自身の現役時代のお話も交え語っていただく。 A代表、そして東京五輪について語っていただいた第1回、第2回に続き、第3回目はJリーグについて。昨シーズン、圧倒的な強さでJ1優勝を果たした川崎フロンターレ。その強さの秘密を、分析してもらった。 ――前回までは、日本代表についてお伺いしましたが、Jリーグについてもお聞かせください。まずは、昨シーズンを振り返っての感想をお願いいたします。 福西 コロナ禍で選手もチームも大変なシーズンだったというのが、最初に思うことですね。キャンプが明けてJリーグが開幕した矢先の中断。試合ができなくなったのは衝撃でした。 ――再開後は無観客試合で始まり、そこから有観客へと移行しましたが、応援は拍手で行なうなどサポーターにとっても難しいシーズンでした。そのなかでJ1は川崎フロンターレが圧倒的な強さで2年ぶり3度目の優勝を飾りました。 福西 コロナ禍による影響がフロンターレに有利に働いた部分はあったと思いますね。彼らが恵まれるルールになったということではなく、フロンターレというクラブがこれまで取り組んできたことや準備してきたものが活きる状況になったという意味です。 ――具体的にはどういうことでしょうか。 福西 過密日程になったことで、選手層の厚さが生きたというのがひとつ。交代枠が3人から5人に増えたことで、途中出場する選手がレギュラークラスなことも対戦相手にキツさを与えました。チーム全体で勝ち切れたことがフロンターレの強さにはあったと思います。 ――2019シーズンは勝ち切れないケースの多かったフロンターレが、勝ち切って勝ち点3を積み上げられた要因はどういうところにあったのでしょうか。 福西 根幹はどんな相手であっても自分たちからアクションを起こして主導して試合を運べるところですね。過密日程のなかでは、このアドバンテージは大きかった。コンディショニング面で見れば、相手に合わせるリアクションサッカーのチームよりも、フロンターレの方が整えやすいですからね。 ――5人交代枠をフルに使って前半と後半でメンバーを入れ替えて、逆転勝ちした試合もありました。 福西 実績のあるレギュラークラスであっても、コンディションが落ちたり、故障を抱えたりすると、スタメンから外されました。競争意識が生まれたこともフロンターレのチーム力を一気に高めた要因になりましたね。鬼木(達)監督としたら起用した選手が次々と結果を残したので、試合ごとに先発メンバーを選ぶのが大変だったと思います。だからこそ、試合前半が上手く運ばなかった場合は、後半から大胆に選手交代でチャレンジもできたのかなと思います。