観光地・三国湊に伝わる「酒まんじゅう」と老舗の和菓子。滋味深き、歴史深き“甘い港まち”を歩く【福井県坂井市】
300年以上伝わる和菓子。地元産にこだわった「鶯餅」
このお店の代名詞ともいえる和菓子が「鶯餅」です。約300年にわたり、今に受け継がれる名品は、砂糖に、地元特産のもち米、小豆、大豆を使って作られています。 鶯餅といえば、餡を牛皮などで包み、楕円形にしてうぐいすの形にしたシンプルな和菓子です。こちらの一品は全て職人の手作り。求肥や餡作り、うぐいす型の成形、きなこのまぶし具合に至るまで、絶妙な作業で仕上げられています。 食べてみると、その丁寧に作り上げられた工程が目に浮かぶよう。解けるような求肥に、上品あんこの甘さ、そこに芳ばしい香りのきなこが混ざり合い、とろけていく。繊細なこの味を昔の人も食べていたんだなあ……先人たちの味覚の鋭さに感嘆し、頬張る姿が蘇ってくるようでした。
こちらのお店、餡もとっても美味しいので、焼き麩に鶯餅を挟んだ最中、昔から変わらぬ製法で作られる「長崎かすてい羅」なども一緒にお土産にするといいですよ。
●SHOP INFO 和菓子処 大和甘林堂 住:福井県坂井市三国町北本町4丁目4-52 アクセス:えちぜん鉄道三国芦原線 三国駅から314m TEL:0776-82-0046 営:8:00~18:00 休:水曜
甘味巡りと合わせてレトロな街歩き。三国湊きたまえ通り
情緒あふれるレトロな街並みを歩くだけで、旅が楽しいものになるのはなぜでしょう。普段の街歩きとは違う、時空を超えた空気が流れているようで、心がすっと和んでいきます。 腹ごなしに和菓子屋さんからも近い「三国湊きたまえ通り」を散策に。三国湊は江戸からから明治にかけて、北前船交易で隆盛を極めていたため、格子戸が連なる町家や豪商の面影などが残っているのです。
例えば、こちらの「旧岸名家」。材木商で富を成した商家で、通りに面した土間では商談が行われた様子が伺え、奥に住居、蔵などが連なっています。
急な階段を登って2階にいくと、地元ゆかりの文人サロンの面影が。こちらの主人が俳句などを趣味にしていたため、サロンが開かれていたそうなんですね。ちなみに福井生まれの文人には作家の高見順や水上勉、中野重治などがいて、文学が育まれた土地でもあったことが伺えます。