【好評価なアトム4と765 LT】ヴァンテージ・ロードスター M2 CS 白眉の9台を一挙乗り比べ BBDC 2020(5)
M2 CSも良いが、M2コンペティションはもっとイイ
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル) photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)/Max Edleston(マックス・エドレストン)/Olgun Kordal(オルガン・コーダル) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 濡れたサーキットでは、アストン マーティン・ヴァンテージ・ロードスターの重さと剛性の変化が、少しのメリットも生んでいる様子。だが電子制御のEデフには、違和感があった。 【写真】一番のドライバーズカーは? 911ターボ、ウラカンからGRヤリスまで (69枚) 機械式LSDを装備するヴァンテージ・クーペの方が、より良いことは間違いないだろう。マニュアルで。 同様に同じモデルでも、最適な仕様を選ぶ大切さを実感させてくれたのが、BMW M2 CS。英国編集部も、もちろんBMW M2 CSはお気に入りだ。でも、より安価なM2コンペティションの方が、もっとイイ。 今回M2 CSが履いていたタイヤは、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2。トレッドパターンは、雨天時のサーキットには向いていない。違うタイヤだったら、こちらも違う得点だった可能性は拭えない。 マット・ソーンダースが「不安定で裏表がある」とグリップを表現したように、走り慣れるまでにはかなりの距離が必要だった。路面が乾くほど、M2 CSの輝きは増すように思えたことは確かだ。 「アンダーステアから、弾かれるようにオーバーステアに転じる」とジェームス・ディスデイルが感じた挙動は、審査員の誰もがうなずくもの。トラクション・コントロールの急激な介入も、好ましいものではなかった。 残る2台は、アリエル・アトム4とマクラーレン765 LT。ボディと呼べる部分のないスポーツカー、アトム4は2019年のBBDC勝者だ。昨年のドライ・コンディションのアングルシー・サーキットや一般道が、クルマの強みを引き出したともいえる。
雨で冷たく濡れても、むしろ爽快
雨まじりの寒いカースル・クーム・サーキットと、その周辺の一般道。冷たい水と気温に我慢したとしても、この路面では積極的に運転したいタイプのクルマではないはず。 ところが実際は、想像以上に楽しいものだった。「ノミネート車両で一番尖っているわけでもなく、トラクションが不足していたり、バランスが悪かったりということもありません」。とマット・ソーンダースが認める。 「冷たく濡れて、惨めになるという心配は杞憂。むしろ爽快でした」。と話すマット・プライヤー。さらに、「シンプルさの大切さを実感します。機敏で軽快で、感触豊かなステアリングホイールをはじめ、操作系の重み付けも完璧」。サイモン・デイビスが続ける。 ジェームス・ディスデイルも褒める。「ジャングルジムのようなボディは、悪天候には向いていません。でも外界との近さが走りの魅力を高め、没入するドライビング体験を生んでいましたね」 筆者も、充分なグリップと沸き立つ自信に虜になった。緩く弧を描く区間では210km/h以上の速度に届き、その先のきつい右コーナーへ食らいつくように回り込んでいく。 ブレーキペダルを蹴り込み、ギアを2段ほど下げる。コーナーの頂点を過ぎたら、滑り出すように次のストレートめがけて加速していく。実際に体験しない限り、信じられないようなアトム4の身のこなしだった。 そしてマクラーレン765 LT。歴代のBBDCのノミネート車両としては、最もパワフルなモデルだ。ドライ・サーキットを走ることが前提のはずだが、雨でも選考を止めるわけにはいかない。