社説:規正法の再改正 焦点は企業団体献金、禁止だ
根深い政治不信を生んでいる「政治とカネ」の病理に向き合わず、またも論点をずらした小手先の「改革案」で乗り切ろうとするなら、信頼回復など到底おぼつかない。 衆院選の大敗を受け、自民党が政治資金規正法の再改正に向けた基本方針をまとめた。 党から幹部らに巨費が支給され、使途公開の義務がない政策活動費は廃止するという。だが、「金権腐敗の温床」とかねて批判が強い企業・団体献金の禁止は盛り込まれなかった。 これでは「抜け穴だらけ」と反対した野党を押し切り、6月に成立させた改正規正法の轍(てつ)を踏むことになる。 与党過半数割れの厳しい審判を突き付けられた事実を受け止め、今度こそ抜本的な改革で、政治資金の透明化を果たさねばならない。 企業・団体献金について自民は多様な政治資金を確保する必要性を挙げ、石破茂首相も1970年の最高裁判決を基に「企業は政治活動の一環として寄付の自由がある」と主張する。 だが判決は、巨額寄付に伴う金権政治の弊害に言及し「立法政策」で対処すべきだとも指摘している。その後も資金提供により政策がゆがめられた事件、不祥事は枚挙にいとまがない。 こうした点を踏まえ、「平成の政治改革」では企業・団体献金禁止と引き換えに、税金を原資とする政党交付金制度を導入した。94年の法改正で全面禁止に向け「5年後に見直し」と付記したはずが、ほごにされたままだ。 立憲民主党や日本維新の会、共産党は企業・団体献金禁止を「改革の本丸」に位置付けており、今月中旬に行った共同通信の世論調査でも7割近くが支持している。「二重取り」をこれ以上放置するのは許されない。 一方、自民案は政策活動費の廃止を明記したが、どこまで透明性が担保されるか楽観できない。外交や企業の秘密など「配慮が必要」と判断されれば、使途を非公表にする余地を残す。 専門家は「実態が明らかにされないと、必要性が検証できない。名称を変えて支出が続く可能性はある」と指摘する。 非課税となる政治資金の流れを監視する仕組みも重要だ。 改正法で記した第三者機関の設置場所を自民案は「国会内が基本」とするが、実効性の面で適切と思えない。少なくとも独立性の確保や行政処分などの権限付与が不可欠だろう。 そもそも自民内の議論では、派閥裏金事件の対応が不十分とする国民の声に応える姿勢が見られない。衆院選後に石破氏は「ご叱責(しっせき)を賜った」と語ったが、徹底した再調査と真相解明に踏み込まないのはどうしたことか。 与野党伯仲の国会は、既得権を断ち、カネをかけない政治を目指す好機である。石破氏は指導力を発揮すべき時だ。