優勝候補スペインに完勝もTV局は「情報番組ではまだ扱えない」なでしこジャパンが“バズらない”理由
サッカー女子ワールドカップ(W杯)豪州・ニュージーランド大会に出場中の女子日本代表「なでしこジャパン」(世界ランク11位)が、1次リーグ第3戦(先月31日)で、過去4戦未勝利だった優勝候補のスペイン女子代表(同6位)を相手に4-0と完勝した。 「ようやく退団する……」契約満了前にチームを離れるイニエスタを首位・神戸が本気で止めなかった理由 この試合はNHK総合テレビで生中継されたが、視聴率は世帯別視聴率6.4%(※後半戦の午後5時から6時まで、ビデオリサーチ調べ、関東地区)。同じ時間帯は民放各局が夕方のニュースでしのぎを削り、3~6%で推移。なでしこジャパンの放映があった日の同じ時間帯の民放各局の視聴率は変わらなかったため、なでしこが他局に〝脅威〟を示せず、視聴率では完敗といえる結果に終わった。世界最高峰の大会で戦前の下馬評を覆す結果を残したにも関わらず、なぜ国内での盛り上がりは無風状態が続いてしまっているのだろうか。 4年に1度の女子W杯で日本は1次リーグ3戦全勝で決勝トーナメントに4大会連続で進出を決めた。全3試合で11得点、3試合連続の完封と、スコアを見る限り向かうところ敵なしだ。 なでしこJAPANを率いる池田太監督も「選手たちにとって、こういう勝ち方ができたのは自信になる」と胸を張った。 対照的に、放映する側のTV局関係者は危機感いっぱいだ。大会直前まで日本国内での放送局が決まらず、開幕1週間前にNHKが日本戦を生中継することが急遽決まった。最初の2戦はBSチャンネル、第3戦のスペイン戦は総合テレビで生中継された。民放局のスポーツ担当ディレクターはこう明かす。 「テレビ1強の時代は確かに終わりましたが、(番組に対して)どのくらいの人が期待しているのか、数字(視聴率)は今も正直で嘘をつきません。ですから、なでしこ(ジャパン)のスペイン戦の数字はがっかりでしたね。結果的に2ケタに迫ることはできませんでしたし、他局の同じ時間帯夕方のニュースの数字もいつもと変わりませんでした」 7月31日のスペイン戦は午後3時50分から放送が開始された。この試合の前半戦の世帯別視聴率は4.6%、後半戦は6.4%と2桁に遠く及ばなかった。 ちなみに同じ時間帯の日本テレビ「news every」が4.9%~6.4%、テレビ朝日の「相棒セレクション」が5.7%、「スーパーJチャンネ」が4.8%、TBS・Nスタが「3.8%~4.4%」フジテレビ「Live Newsイット!」が2.1%~2.9%。数字上は見劣りしないよう見えるが、「『W杯を中継すれば2ケタは行ける』と言われていますし、今回、その数値を残すことができれば、上層部に(なでしこJAPANを)アピールできる材料になったのですが、NHKで放映された同じ時間帯の他局が数字を落としていないので、アピールするには難しいんです」(同) テレビマンはその時の視聴環境、特に天気を大事な要素のひとつにあげる。スペイン戦は夏休み期間中で、外に出れば全国ほとんどの地域で30度を超える酷暑の中、テレビを視聴する環境としては追い風だった。それだけに、出てきた数字に対してはシビアな見方になった。 ちなみに、NHKは奇数月のこの時間帯は「大相撲中継」を行っていて、初日や千秋楽は2けた(10%)以上を記録するのは常だ。スペイン戦はウィークデーに行われたため、単純な比較はできないが、別の民放局の関係者はこう明かす。 「大相撲がある月の日曜日は、いわゆる“裏”で放送されている日本テレビの長寿番組『笑点』も大相撲に数字を食われるんです。そこまでは求めていませんでしたが、(なでしこジャパンのスペイン戦の)この数字では、ワイドショーを中心にした情報番組でなでしこジャパンを扱う局はないでしょうね。事実、うちではなでしこジャパンを情報番組で扱うことが見送られました」